さそり座
内省と自由
もっと自分を悲しんでいこう
今週のさそり座は、寄せては返す波のごとき過去の残照を見つめていく老いた船乗りのごとし。あるいは、智を突き破ったところにある「悲」を養い育てていくような星回り。
気を付けていようがいまいが、人はふとした拍子に遠い日の思い出に足元をすくわれてしまうことがあります。
若かりし頃の過去の栄光しかり、結ばれることなく手元からこぼれ落ちていった恋しかり。そうしたものは、過去のものになるにしたがって苦く心苦しい重荷となって、自分の心を地の底へと引きずり降ろしていくのです。
とはいえ、本来はすみやかに流れ去り、姿を消していくはずのそれらの残照を手元に引きずり出しているのは、他ならぬ自分自身なのだが……。
こういうことは、いくら頭で理解しようとしたり、解決しようとしても無駄です。自分という存在をそっと突き放しつつ、その苦しみや修羅のごとき己れの性をひしひしと悲しんでいくことでしか、どうすることもできないもの。
今週は、自分のことをきちんと悲しんでいくことを通して、自分の過去に然るべきケリをつけていきましょう。
無心ということ
『分析心理学』のなかでユングがプエブロ・インディアンたちについて書いている有名な一節があります。すなわち、彼らが何時間もずっと座ったままでいるので、「何か考えごとをしているのですか」と訊くと、彼らは怒りだしてしまったというのです。
彼らはそのとき、「おかしな人間だけが考える、奴ら(白人たち)は頭で考える。われわれは考えたりしない」と言ったという。さらに彼らは続けて、「しっかりした人たちは頭では考えません。われわれは心で考えます」と言ったとも伝えられている。
頭ではなく、心で考える。これは禅宗でいうところの「無心」というところに近いかもしれない。
いずれにせよ、あなたもいつの間にか「奴ら(白人たち)」と同じになっていたのではないだろうか。
かつて禅宗を世界に向けて広めた鈴木大拙は、
「智は悲によつてその力をもつのだといふことにきづかなくてはならぬ。本当の自由はここから生まれて出る」(『人間本来の自由と創造性をのばさう』)
と述べましたが、それはそのままいまのあなたが目指すべき境地とも言えるのではないでしょうか。
今週のキーワード
頭ではなく、心で考える。