いて座
一歩踏み出す
ただひとり歩み続けよ
今週のいて座は、「木がらしや目刺しにのこる海のいろ」という芥川龍之介の句のごとし。あるいは、意識よりもっと深いところにある流れに沿って、一歩踏み出していくような星回り。
木枯らしの音、目刺の青い色、そして海。その取り合わせの巧みさに思わず目が奪われがちな掲句です。しかし、地に足の着いた生活を自分の実体験から詠みあげた句という感じは全然しませんね。むしろ、まだ見ぬ新生活の情景を憧れとともに空想でつくってみた句という感じで、どこか異邦人の風情があります。
「日常」と「旅」と、「旅行」と。この3つのあいだに、こちらを問いかけるような微妙なニュアンスをたたえて転がっているという意味では、まさに今週のいて座のあなたにぴったりの句と言えるかもしれません。
あなたがいま誘われているのは、日常への回帰でしょうか、それともまだ見ぬ未知に触れることで自分を変えてしまうような旅でしょうか、それとも気晴らしの旅行か?
大切なのは、そのいずれかを選ぶにあたり、その動機付けを他人にあずけないことです。今週はある種の人生のターニングポイントにいるものと思ってください。
日々の積み重ね
坂本九の『上を向いて歩こう』という曲の作詞を手掛けた永六輔さんによれば、この曲は「歩く歌を作っておきたい」「それも泣きながら」という会話から生まれたのだとか。
考えてみれば、『サザエさん』に出てくる磯野一家のように家族全員が和気藹々としていて、お金も十分にあってという生活を送っている人なんて現代社会では珍しいのかもしれない。それでも人は、しんみりしたり陽気になったりしながら、人生という道を自分の足で歩いていく訳です。
今週はそんな当たり前の事実に立ち返りつつ、背筋を伸ばして大股で歩き、食事の時間をゆっくり楽しみ、いつもより少しだけ人に親切にすることで、ささやかな幸せの感覚を日常の中で取り戻していくでしょう。
幸せは追いかけるべき目標ではなく、日々の行為や習慣の積み重ねであり、結果に過ぎないのだと改めて実感していくことです。
今週のキーワード
上を向いて歩こう