いて座
他の何よりも確からしく信じられるもの
運命を統べるもの
今週のいて座は、『目をつむりていても吾(あ)を統ぶ五月の鷹』(寺山修司)という句のごとし。あるいは、自分をひっぱりあげてくれる存在にうんと目いっぱい身をあずけていこうとするような星回り。
掲句の「五月の鷹」は、いわば“ハイヤーセルフ”のような超越的な存在を象徴し、目をつむっていてもそうした絶対的な存在に導かれているのだという意識について語っている。または、そんな風に導かれたいという希求が語られているのだとも読める。
どちらであったとしても、「五月」「鷹」「統(す)ぶ」という語の選択のみずみずしさと、ここぞとばかりに目をつぶってみせる演技力には、とても無視することのできない作者ならではの強い個性を感じざるを得ない。
短歌に演劇、映画、詩や評論と、多くのジャンルを縦横に行き来しながらその才能をスパークさせていった作者だが、その旺盛な表現活動の原点は10代の時の俳句にあった。そして、そんな作者が亡くなったのも5月で、先日同じ日にライバルであり盟友であった唐十郎が亡くなったが、もしかしたらそんなところまでも「五月の鷹」は統べていたのかも知れない。
5月15日にいて座から数えて「仰ぎ見るべきもの」を意味する9番目のしし座で上弦の月を迎える今週のあなたもまた、自分なりの設定に積極的に入り込んでいくべし。
「ムーン・リバー」
ときどき、この世界で起きた何もかもが夢なんじゃないか、そんなふうに思えてくることはないでしょうか。けれど、そんな時に見上げた夜空に浮かぶ月を見ていると、そのあまりの生々しさに心打たれて、これだけは間違いなくリアルなんじゃないかと思えてくる。他の何もかもが信じられなくても、これだけは信じてもいいのかも知れないと。
「ムーン・リバー」を作詞したジョニー・マーサーも、あるいはそんな感覚を思い浮かべながら歌詞を書いたのかも知れません。以下は曲の出だし部分の抜粋です。
Moon river,wider than a mile(ムーン・リバー、この広く果てしない川よ)
I’m crossing you in style some day(いつの日か、あなたを颯爽と渡ってみせる)
Oh,dream maker ,you heart breaker(ああ夢を見させもすれば、心を砕きもする)
Whereever you’re going I’m going your way(あなたが行くところならどこへでも、私はついて行く)
ここでは世の中の基準や、よいとか悪いとか決めつけられ、頭で意味づけられる以前のナマの世界に生きているもう一人の<私>として「ムーン・リバー」が登場してきているように思えますし、掲句の「五月の鷹」と近しい位置づけにあるのではないでしょうか。
そうした意味を踏まえて、今週のいて座もまた、ひとつそんな川の流れをはるか上空に感じながら過ごしてみるといいでしょう。
いて座の今週のキーワード
天上にいるもう一人の<私>