いて座
木々の梢の触れあい
本来的な多数性を取り戻す
今週のいて座は、ハンナ・アーレントの「活動(action)」のごとし。あるいは、独りでありながら、他者と深く結びついていることを発見していこうとするような星回り。
20世紀後半にハンナ・アーレントという女性の哲学者は、7年の月日をかけて著した『人間の条件(後に敢行された母国語であるドイツ語版では『活動的生』)』において、人間の「活動的生活」は「労働」と「仕事」に加え、「活動」という3つの要素が折り重なるようにして存在しているのだとした上で、「活動」をめぐって次のように述べています。
活動actionとは、物あるいは事柄の介入なしに直接人と人との間で行われる唯一の活動力であり、多数性という人間の条件、すなわち、地球上に生き世界に住むのが一人の人間manではなく、多数の人間menであるという事実と対応している。
例えば、「考える」という営みは、個において問いを深めることに本質をもっていますが、一方で、個というのは必ず他の個とつながることで、はじめて個であり得ますから、「考える」ことを突きつめていけば、テクストを精読するにせよ、友と会話するにせよ、必ず他者との深いつながりへと行き着いていくのです。
それは労働とも仕事とも関係のないため、一見すると非生産的なことのように思えますが、アレントはこうした「活動」を日常に招き入れていくことで、自分にとってほんとうに大切な何かに出会っていくことができるのだと考えたのではないでしょうか。
その意味で、9月23日にいて座から数えて「多数性」を意味する11番目のてんびん座に太陽が入座する(秋分)今週のあなたもまた、みずからがコミットするべき同胞とは誰なのか、そして彼らとはいかなる内なる思いによってつながっているのかを確認していくべし。
微妙な差異を活かしあう連帯性
これまで多くの心理学者が人間的個我の有機的統一体を象徴するものとして「樹木」を用いてきました。そして西洋的とりわけアメリカ人においては、「個人」というのは、もっぱら背が固くて、真っ直ぐで、ひときわ目立ってそびえている、というものであるのに対して、日本の伝統的な庭園では、むしろ横に広がって延びていたり、枯れ木も組みこまれていたりなど、木々はそれぞれ隣り合った木々と調和ある均衡を保つものとして存在しています。
つまり、日本ではどうやら個というものは、緊密な集合関係のなかでの“質的差異”を意味するものであって、独立して離れているとか、際立っているということではないんですね。
松の小枝の松葉のように、一見すると互いに非常に相似ているという場合に限り、日本では、そのひとつひとつがほんのかすかに、繊細に異なっているということで真の個別性が成り立っているのだと考えられているのであって、それは西洋において単一性や孤立性のあらわれとして見なされる個別性ということとは、かなり違っているのかも知れません。
今週のいて座もまた、そうした日本なりの個性の発揮の仕方ということに立ち戻ってみるといいでしょう。
いて座の今週のキーワード
同調圧力に反するために