いて座
ユーモアと遊び心
※1月10日〜16日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。次回は1月16日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
現実に血を通わせるということ
今週のいて座は、「富士山も一吹出物冬日和」(高野ムツオ)という句のごとし。あるいは、血の通ったユーモアで冷たい現実を包み込んでいこうとするような星回り。
確かに、地球規模で見れば富士山は吹き出物のひとつに過ぎないのかもしれません。しかし、作者はそういう言い方をして富士山を貶めているのではないのでしょう。一読して受ける印象としては、むしろ富士山が身近に感じられてきます。
作者は宮城県の出身で、3.11以降は積極的に震災詠を作ってきたことでも知られていますが、考えてみれば地中深くのプレート同士の衝突によって地盤が隆起し、富士山のような山が出来上がりもすれば、プレートのひずみによって大地震が起こりもし、われわれ人間はそれに太古の昔から科学技術の発達した現代にいたってなお翻弄され続けている訳です。
その意味で、掲句の吹き出物の喩えはそうした科学さえも突き抜けた先にある、さまざまな事実や真実を包み込む神話的なるものの大らかなユーモアに他ならないように思います。
日本を代表する活火山である富士山がいったん噴火すれば多くの犠牲者が出るのに不謹慎なと言うなかれ。こうしたユーモアというのは、通り一遍の慰霊やお悔みなどより、ずっと親身で人の血が通ったものなのではないでしょうか。
2022年1月3日にいて座から数えて「資産」を意味する2番目の星座であるやぎ座で新月を迎えていく今週は、常識的な価値判断や善悪を突き抜けたところで自分に与えられた経験の豊かさや深みに気が付いていきやすいタイミングと言えるでしょう。
はかなさと遊びと
以前、鎌倉文学館を訪れた際に「人生もまた一輪の花のようにはかないものであるならば、友よ、砂の上にぼくらの家を建てて、遊ぼう」といった一文を目にした記憶があります。
砂場で遊んでいる世代の子どもならば、むろんそんなことをいちいち言語化して考えたり、会話している訳ではないでしょうが、なんとなくその場に居合わせた子供らで実際に砂場や砂浜で大きなヤマをつくり、トンネルを掘って、そこから向こう側をのぞいていると、存在するもののはかなさと、それゆえの美しさのようなものが自然と共有されたように感じられる時があります。
そういう意味では、ときどき大人が子どもみたいなことをしたくなるのも、もっともなことなのかもしれません。後先のことなど変に考える必要はないのです、俳句も遊びであり、衣食住も、神事も遊び。それが希望である限り、それがどんなものであれ、あなたには遊びを追求していく権利があるのだということ。遥かなる、それでいて吹出物でもあるような富士のもと、この世で思う存分、遊んでいきましょう。
いて座の今週のキーワード
神話的大らかさを