いて座
時代的不安との闘い
理解は迂回路をとる
今週のいて座は、反「キーワード化」していく知性のごとし。あるいは、めんどくさくても、意味のありそうなことにはとりあえず泥臭く格闘していこうとするような星回り。
ネット社会での議論というのは、どうしても特定の言葉を抑えれば理解できるという具合に「キーワード化」されていく傾向があります。橋本治によればこうした考え方が浮上してきたのは1980年代半ば頃のことだそうですが、結果的にそれは「ネットで検索すれば何でもわかる」という考え方が普及していくための布石となったところがあります。
何かを「分かる」ということはいくつもの自動ドアをただ機械的に開け続けるようなことではありませんが、自分たちの置かれている現実が巧妙に複雑化し続ける今の日本社会において、少なくとも「簡単に分かる」というイージーな手段に飛びつく習慣はまず最初に捨てるべきものであるように思います。
29日にいて座から数えて「探求」を意味する9番目のしし座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、惰性的な知性の使い方にいかに見直しをかけていけるかということが問われていくでしょう。
野村喜和男の『狂気の涼しい種子』
自分のことを「涼しい」と表現できるということは、精神のどこかに不安や違和がないまぜになった「あやうさ」を感じているということであり、そこに自身の精神状態を簡単には言い表せないという自覚が混じることで、この詩は生まれてきたのかも知れません。
けさは残り雪のあやうくて、/困ります、
またそれを見ている私ごときのあやうくて、おお私は不具、/これはもう疑いようがありません。
転生への希い(ねがい)は遠景にかすみ、かと思うと/私のちまちまとした縁辺ちかく、
水滴のようにしたたり、/神経の蟻(あり)を濡らしています、
おお私は不具、/眼を閉じれば、/灼(や)かれた空の色あい、
飛ぶ不吉なひらがな、
今週のいて座もまた、いま感じている不安や原初的な感情を分かりやすいキーワードに変換してしまうのではなく、ただありのままに見つめていきたいところです。
いて座の今週のキーワード
不安を自覚的に抱える