いて座
道の途上にいる自覚
37歳の決意
今週のいて座は、「兵隊がゆくまつ黒い汽車に乗り」(西東三鬼)という句のごとし。あるいは、現代の日本において誰よりも「冷徹」にあろうとしていくような星回り。
昭和12年(1936)頃の句。満州事変に端を発した戦禍は日中戦争にとどまらず、太平洋戦争へと拡大の一途をたどっていました。そうした状況の中で、日本本土でもたくさんの戦争俳句が詠まれたのです。
作者は当時、37歳。戦争へとひた走っていた軍部の考えに迎合するような俳句がたくさん生まれることを予想し、危惧を高めた結果、あえて季語を用いずに「冷徹に、戦争の本質を見極めて」俳句を作ろうと決意したのです。
そして、たとえ自分は戦場におらずとも、「私たちの肉体に浸透する「戦争」をおのれの声として発すればよい」と考え、実践したのです。
そうして生まれた掲句の中で、特に目をひくのは「まつ黒い」という表現でしょう。確かに事実として汽車や煙は黒かったでしょう。けれど、本当に「まつ黒」だったのは、汽車に詰め込まれた兵士のこころであり、それは自分たちの行先で待ち構えている死のイメージに他ならなかったのではないでしょうか。
17日にいて座から数えて「歴史的想像力」を意味する11番目のてんびん座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、社会の今をより生々しく感じ取っていくためのドライブとして、過去の歴史や未来のビジョンに触れていくことになりそうです。
自分とのかくれんぼ
例えば、今よりずっと未熟だった過去の自分や、どうしても許せなかったことごとが、まるでかくれんぼのように現在のあなたを取り巻く状況や、これから起きてくるだろう事態の中に潜んでいるのだと考えてみてください。
つまり隠れているのも自分ならば、それを見つけていくのもまた自分に他ならない。すると次第に、未来は過去の映った鏡となり、過去は未来の記憶として見えてくるでしょう。
そういう通常の「時間の流れ」が逆流しているかのような感覚の中で、あなたはかつて苦しかった頃、何をこの宇宙に誓ったのかを思い出し、そうして初心に返っていくことで再び一歩二歩と前進していく力強さを得ていくことができるはず。
かくれんぼしている自分を見つけ、前に足を踏み出していく中でこそ、歴史的想像力というのは初めて発動してくるものなのではないでしょうか。
そういう意味では、今週のいて座はまだまだ自分はそんな道の途上にいるのだと、改めて思い知ってゆく時なのだとも言えるかも知れません。
いて座の今週のキーワード
時間の流れが逆流していく感覚