いて座
急がば回れ
ゆっくりと眺めること
今週のいて座は、「白牡丹といふといへども紅(こう)ほのか」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、ゆったりとした時間の流れに身を浸していくような星回り。
白い牡丹にかすかに赤いところがある、というだけの内容。とはいえ、最初の「白牡丹(はくぼたん)と」とあえて字余りで始めることで、一気に読みくだす時間を引き延ばし、一見無意味に見える「いふといへども」をはさむことで、まるで花そのものをゆっくりと眺めるかのような呼吸へと自然と誘っていく手腕はただごとではありません。
高速度な社会のテンポに慣れ親しんでいる現代人は、掲句のように何かをゆっくりと味わうように見つめて楽しむという楽しみ方をほとんど忘れてしまっているかのように感じます。
それでも、ときどきでもゆったりとした時間の流れに身を浸していくことで、きれいなものをよりきれいに、美しいものをより美しく感じていけるのではないでしょうか。
それにしても、「立てば芍薬、座れば牡丹」の白牡丹に、うっすらと差す紅とは。なんだか映画のワンシーンにも出てきそうな光景ですね。
6月2日にいて座から数えて「心の落ち着き」を意味する4番目のうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、いつもより少しテンポを落としていくことを意識してみるといいでしょう。
丁寧に仕込む
たとえば、かつて鮓(すし)と言えば、もっぱら魚を米に重ねたものに重しをのせ、発酵させた「熟れ鮓」のことを指しました。
それで鮓を押して、二、三日待つわけです。そのあいだに、色々なことを考えたり、気持ちが変化したりということがあると、なんとなく鮓の味にそれが出ているような気がする。
そういうことが続いていくと、待ち方も変わってくる。できるだけ上機嫌でいようとか、あんまり負の感情に引っ張られそうなことには首をつっこまなってくなる。さて、ではそうなるとこれは何を仕込み、一体何を待っていることになるのか?
いずれにせよ、今すぐに役立つことやモノは、確かに便利ではあるけれども、すぐに自分や周囲に消費され消えてしまうものでもある訳で。
いて座のあなたはいま、もっとじっくりと時間をかけて作られ、丁寧に使われ繰り返し堪能されていくような生き方を、自分の手で作りなおしたくなってきているのかも知れません。
今週のキーワード
スローモードなほうへ