いて座
火蛾のごとく
精神の輪郭
今週のいて座は、「灯火のすはりて氷るしも夜かな」(松岡青羅)という句のごとし。あるいは、肚が据わって精神がスッと伸びていくような星回り。
「しも夜」とは、空が晴れて霜の降りる寒い夜のこと。そんな夜に、おそらくジッと蝋燭の炎だけを見つめているのでしょう。
灯芯から立ちのぼる炎が、冬の空気のなかで澄んで長き伸びている。「すはりて」とは、「肝が据わる」などの「据わる」のことであり、ゆらめきながら真っ直ぐに伸びゆく炎のなかで、背筋を伸ばして垂直軸に沿っておのれの魂を「立て」ていく感覚をなぞっているのかも知れません。
そして、そうしたあれこれをくだくだと説明する代わりに、ただ「すはりて氷る」という一語で言い切ることで、いよいよ作者の肚は決まったはずです。
俳句は短いだけに、一語一語を選び抜いて不要な要素を取り除いて最小限にとどめることが命であり、それは今のいて座に最も必要な指針と言えるはず。
15日に自分自身の星座であるいて座で今年最後の新月を迎えていくあなたもまた、改めてひとつの蝋燭の炎となったつもりで、新月という始まりの期間を過ごしてみてください。
精神の目覚め
ファーブルの『昆虫記』と言えば、今日知らない人はでしょう。昆虫の生態をつぶさに観察した文庫版にして4000ページを超すこの著作は、生き物について考えていく上での原点と言えるほど人類の大切なレガシーとなっていますが、彼の生涯は決して順風満帆ではなく、進化論を認めず、正規の学者へのコースをたどらなかった彼の業績は、当時ほとんど正当な評価は受けられませんでした。
そんな活動の原点について、彼は自身で「最初の知的な微光が目覚めたのは、ある日、幼い私が両手を後ろにし、太陽の方を向いて考えていた」ときであると述べた後、次のように続けています。
「私は灯火の明るさに惹きつけられる蛾であった。私が輝く栄光を口で見ているのか、あるいは眼で見ているのか」と。そして目と口を交互に閉じた後で、「私は私が眼で太陽を見るということを的確に知ったのだ」
一見バカげた問いにも見えますが、こうした根本的な問いから出発し、その気になればいつでも初志に立ち返ることができたことが彼の最大の強みであり、また憩いの場にもなっていたのではないでしょうか。
今週のいて座もまた、彼のように初志に立ち返り、かつて自分に差し込み、今もまた自分を照らしてくれている精神の灯火に自然と惹きつけられていくことになりそうです。
今週のキーワード
ファーブルの太陽体験