いて座
心を込めた交流を
矛盾を受け止めていく
今週のいて座は、「面影と酒が残っていて寒し」(池田澄子)という句のごとし。あるいは、身の内にいつまでも残る他者の残像をそっと見つめていくような星回り。
酒好きの、けれど、作者にとってかけがえのない存在だった誰かの酩酊した面影が、火種が消えた酒席に酒の匂いとともにいつまでも残っている。そんな情景が浮かんでくる一句。
おそらく、酒は目の前のものであると同時に、記憶の中のものであり、「面影」とは作者の俳句の師である三橋敏雄のそれでしょう。逝ってしまった人と、残された自分との間に積み重なっていく歳月が「寒し」という結びのなかで結晶化しているのです。
その意味で、作者にとってこの「面影」は人生の折々において、そっと思い浮かんではその間に流れた歳月の重みを感じ直していく“羅針盤”のようなものなのかも知れません。
すこし離れたかなという頃合いで振り返っては、その度にまだ近くに感じることを確認し、やるせないような、どこかホッとするような、矛盾した感情に駆られる存在。
逆に言えば、そうした矛盾した感情をどのように受け止められるかで、みずからの人としての成長もはかられるのかも知れません。
30日にいて座から数えて「決定的な他者」を意味する7番目のふたご座で月蝕の満月を迎えていく今週のあなたもまた、自分にとってそんな羅針盤となるような他者の存在を思い浮かべてみるといいでしょう。
コミュニケーションのコードを外す
モンゴルには「ホーミー」という伝統的な歌唱法が今でも伝わっていて、もともとは遊牧民が家畜を呼ぶために使っていた発声が源流と言われています。一人で低音と高音、二つの音を同時に出すのが特徴で、初めは「こんな音を人間って出せるのか」と驚くばかりなのですが、次第にどこか懐かしさを感じさせる不思議な響きに引き込まれていきます。
それは人間だけに限らないようで、モンゴルでは草原で馬に乗りながらホーミーを歌うと、馬も嬉しいらしくこちらに耳を向けて聞いてくれるのだという話を、実際にモンゴルの人から聞いたことがあります。
私たちは普段、動物に話しかけることをどこか「おかしい」と感じていますし、それはどこかで会話の通じない相手には話しかけたり話を聞いたりしてはいけないというコードとなって社会のあちこちに張りめぐらされていますが、先のモンゴル人の話などを聞いていると、そうしたコードは人間が本来備えているコミュニケーションの可能性を著しく制限してしまっているのではないかと思われてきます。
今週のいて座は、ある意味でそうした社会的に強制されたコードからいかに逸脱し、コミュニケーションの可能性を模索していくことができそうです。
今週のキーワード
特別で大切な合図