いて座
どうせなら美しい闘いを
脱・マウント合戦
今週のいて座は、「秋の暮通天閣に跨がれて」(内田美紗)という句のごとし。あるいは、誰かに「跨がれる」ことへの驚きと親しみに感じ入っていくような星回り。
「跨ぐ(またぐ)」とは「股を開いてものの上を越える」という意で、「もの」に対してかなり馬鹿にした態度と言えますし、何者であれ跨がれたくないと思うのが一般の心理でしょうから、掲句はその例外について詠んだ句と言えます。
大坂の歓楽街である新世界の通天閣は高さ108メートルで、現在のそれはもともと明治時代にエッフェル塔を模して建てられたのを、戦後復興させたもの。
秋の夕暮れという寂しさが募るシチュエーションで、ふと斜め下から通天閣を仰いだ際に、二本の脚部が股のように感じられたのでしょう。ただ、そこで通天閣になら跨がれてもいいか、と思えた。あたりには串カツ屋のネオンが眩しい歓楽街が広がり、親愛の情が自然と湧いたのかも知れません。
ただ、そういうことは、人に置き換えてもまれに置きうることのような気がします。
9月22日のいて座から「同胞意識」を意味する11番目のてんびん座へと太陽が移っていく今週のあなたもまた、そんな風に滅多に感じないような親愛の情が自然と湧きやすいタイミングとなっていくでしょう。
カポエラ使いの見る光景
世界で唯一、音楽にのせて戦うブラジル生まれの格闘技カポエラは、もともと植民地時代に奴隷たちが手かせをつけられたまま戦えるよう技術を発展させて出来上がったもの。
審判はおらず、人の輪の中で戦うものの、その本質は戦いというより身体を通じたコミュニケーションにあり、いいカポリストほどまたあの人と組みたいと思われるのだそうです。
身体の自由が著しく制限されていただけでなく、精神までも監視され支配されていた奴隷たちが自分たちの戦い方として選択し、確立していった格闘技が他のどの格闘技よりも平和的であり、勝ち負けを超えたところを目指すものであるという事実は、何とも皮肉な現実であると同時に、それ自体が驚くべき教えと言えるのではないでしょうか。
少なくとも、今週のいて座にとって、天地を逆さまにし、そこから見えてくる景色を楽しんでいくカポエラ使いたちの優雅な戦いぶりはよき指針となっていくはずです。
今週のキーワード
格闘と芸術の融合