いて座
もっと輝いていくために
自分なりの実感を求めて
今週のいて座は、伊勢湾に突き出た大王崎(だいおうさき)の突端に立つ若き日の折口信夫のごとし。あるいは、これまでとは異質な考えが噴出してくるような星回り。
光充つ真昼の海に突き出た大王崎の尽端に立つた時、遥かな波路の果に、わが魂のふるさとのある様な気がしてならなかつた。(「妣が国へ・常世へ 異郷意識の起伏」『古代研究』)
遅れてきた古代人・折口信夫が「神」の祖型としての「マレビト」の思想を着想した瞬間である。このとき、彼の前にはまぶしい陽光を反射する、穏やかな伊勢の海が広がっており、その光景の中から「海の彼方より寄り来る神」という考えが不意に湧き上がってきたのであり、それはおそらくかつて海を渡って日本列島にやってきた日本人の祖先たちが抱いていたのと同じものだったのではないでしょうか。
彼の学問の根底には、そうした本で読んだだけの机上の空論では終わらない、自分なりの仕方でつかみとった実感というものが息づいていました。彼は実際に海の彼方を見つめながら、そこに自身の魂の原郷を嗅ぎ取らんとした訳です。
19日にいて座から数えて「向上心と探究」を意味する9番目のしし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、今こそみずからの足や手や鼻や耳を通して深い実感を手繰り寄せていけるかが問われていくでしょう。
アマテラスの示した条件
伊勢と言えば天皇家の祖神として祀られるアマテラスですが、『日本書紀』によればアマテラスは11代の垂仁天皇の時代に初めて伊勢の地で祀られるようになったそう。
アマテラスを祀る場所を探し求めて、放浪の旅に出た垂仁天皇の皇女・倭姫(ヤマトヒメ)が伊勢の地に入ったとき、アマテラスが「この神風の伊勢国は、常世(とこよ)の浪の重浪(しきなみ)帰(よ)する国なり。傍国(かたくに)のうまし国なり。この国に居らむと欲(おも)ふ」と言ったので、社を立て、はじめてアマテラスがこの世に降り立ったのだと伝えられています。
太陽を司る女神が、自分のいのちを新たにするにあたって、みずから「ここで鎮まりたい」と欲したというのは、現代日本社会の女性たちにとっても、極めて示唆に富んだ伝承と言えるでしょう。
その際、場所選びの基準となったのは、「常世(とこよ)の浪の重浪(しきなみ)帰(よ)する国」であること。つまり、「古代人が思い描いた海の向こうの理想郷と繋がっている」場所であること。そして、「傍国(かたくに)のうまし国」であること。すなわち、「都からは遠く離れてはいるが、満ち足りたよい」場所であることの二つ。
今週のいて座のあなたもまた、自身の精神の質を高めてくれるフィールドを求めて色々と動いてみるといいでしょう。
今週のキーワード
魂のふるさと