いて座
労働とその連続体
土地に根づき汗をかく
今週のいて座は、「塩田に百日筋目つけ通し」(沢木欣一)という句のごとし。あるいは、地道にひとつひとつ作業をこなしていくような星回り。
塩田は大量の海水から水分を蒸発させ、塩だけを取り出すために用いられる田んぼのことで、1970年代に入って廃止されましたが、かつては瀬戸内海や能登半島など日本各地の沿岸地帯で見られた光景でした。
掲句の「筋目つけ通し」とは、塩をとる際に海水を蒸発しやすくするため、熊手のような道具で田の表面に来る日も来る日も繰り返し筋目をつけていく作業を行っていたことを指しているのでしょう。
「百日」はさすがに誇張だとしても、夏の天日に照らされる中で連日続けられる重労働は、気が遠くなるほど過酷なものであり、ほとんど無限とも言える忍耐力と根気強さを要したのであろうことが感じ取れます。
もはやこの句に描かれているような光景はほとんど想像さえできなくなってしまいましたが、この国の風土はそうした土地に根づいた汗かき仕事の積み重ねによって築かれてきたのであり、そうした労働へのリスペクトが失われ始めたところから、国として根底が歪み始めてしまったのかも知れません。
11日から12日にかけて、いて座から数えて「労働と奉仕」を意味する6番目のおうし座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、みずから汗を流すこと、現場に立つこと、同じ作業を淡々と繰り返していくことといった、すべての仕事の基本に立ち返っていきたいところです。
連続する波の一つとして
トルストイは『人生論』という著書の中で、死後の生ということを一生懸命考えているのですが、そこには次のような一文が出てきます。
人間は、自分の生が一つの波ではなく、永久運動であることを、永久運動が一つの波の高まりとしてこの生となって発現したに過ぎぬことを、理解したときはじめて、自分の不死を信じるのである。
普通、死後に残るのはその人の思い出だけですが、トルストイはそうではないと言っているのです。ひとつひとつの「波」はあくまで大きな海の一部であり、海流としての自分(世代を超えた働きかけ)という視点で生きることができた場合、その人が死んで肉体は滅びたとしても、世界に対して作られた関係によって、より一層その働きが力強くなることもあるのだと言うのです。
こうした視点もまた、いまのいて座にとってロールモデルとなるような仕事観に通じていくのではないでしょうか。
今週のキーワード
連続性のなかで捉える