いて座
時間と飛翔
逃避か帰還か
今週のいて座は、ジャンプの途中で一瞬気絶するジャンパーのごとし。あるいは、日常時間を垂直方向に切断していくような星回り。
冬季オリンピック競技のフィギュアスケートに並ぶ花形といえば、ビルの高さほどある踏み切り台からジャンプし、美しく遠くへ跳んで着地を決めるスキージャンプ。
時速100キロ以上の猛スピードで宙に舞うジャンパーたちは、踏切浮上の際にほんの一瞬のあいだ気を失うのだそう。そこで地上を這うように暮らしている、普段の日常慣性をどれだけ深く失うかと同時に、そこからいかに早く目覚めてトレーニングで身につけた飛翔形態を的確に適用させることができるかで、飛行距離は決まるのだとか。
それはまるで質の異なる別の時空間への超越。日常の時空間にゆらいでいる水平的な流れ、すなわち打算や忖度・ナルシシズムやコントロール欲求をいかに切断し、背後にとぐろを巻いていた自己監視システムを、置き去りにできるかが問われる真剣勝負のようでもあります。
ただし現実世界からの逃避などではなく、閉ざされていた五感回路は失神を引き金にパカッとあけて生きた時間を取り戻す、生きた現実への帰還の試みであるはず。
20日にいて座から数えて「再誕」を意味する5番目のおひつじ座へ、太陽が入り春分を迎えていく今週のあなたもまた、ジャンパーよろしくパカッと五感をあけるための引き金を、できる限りの思い切りで引いていくべし。
たどり着く先をめぐる確信
踏み切り台を飛ぶときのジャンパーは、どこかてんとう虫を思い起こさせる。この昆虫は漢字で「天道虫」と書くように、もともと太陽に向かう習性を持っており、とことこと木や葉っぱや指先てっぺんまで登ると、パッと天に向かって飛び立っていくことから、世界中で“神様の使い”とされてきた。
今週のいて座は、そんなてんとう虫さながらに、自分の今後を大きく左右する大跳躍を前にしているのだとも言える。ただ覚えておいてほしいのは、太陽はこの世に二つとして存在しない、ということ。もし三つも四つも太陽があれば、てんとう虫もどこに飛んでいったらいいのか迷い続け、その跳躍も中途半端になってしまうだろう。
きっと太陽に飛び込んでいくだけの希望を抱き続けるためには、訓練や実力だけでなく、信じられないほどの幸運が必要となってくる。「自分の歩む先にはきっと太陽がある」と思い込むだけの大胆さがまずもって求められていくはずだ。
今週のキーワード
垂直時間を生きる