いて座
この世は喰うか喰われるかの世界
純粋かつ残酷
今週のいて座は、「ぱつと火になりたる蜘蛛や草を焼く」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、昔の記憶がぱっと思い出されて、それが燃え広がっていくような星回り。
季語は「草焼く」で、春先に野原の枯草を焼いて、草萌えをよくし害虫を駆除することを言いますが、掲句の場合はそんなに大それたものではなく、そばでじっと見ていられるほどの火だったのでしょう。
火が草を伝わっていく。その先に1匹の蜘蛛がいる。やがて蜘蛛は小さな火玉となって消えてしまった。
それは大人の世界からは目の届かない、草下のささやかなドラマであると同時に、誰の心のなかにも眠っている純粋さと残酷さとが表裏一体となった、遊び心の再燃した特別な瞬間なのだとも言えるかも知れません。
2月24日(月)にいて座から数えて「童心回帰」を意味する三つ先のサインであるうお座で新月を迎えていく今週は、忘れかけていた純粋な思いや昂ぶりの感覚をあらためて今の生活に持ち込んでいくことが重要なテーマとなっていきそうです。
蜘蛛は言い訳などしない
蜘蛛は何もないところに巣を張っていくという創造的行為から、北欧神話などでは「繁栄」や「知恵と労働」のシンボルとされてきました。
しかし一方で、キリスト教では「悪魔」「強欲」「狡猾」など真逆の意味を表す象徴ともされてきました。
ただ、その目的が創造と破壊のいずれかに映るにせよ、巣づくりという行為自体は明らかに未来を見据えた行動であり、やはり他の誰と共に生きざるを得ない人間にとって、蜘蛛というのは自身の鏡としての役割を担う、とても重要な意味を持つ存在だったのだと思います。
今週のあなたは、共に生きる相手を待つか、引っかかった相手を喰らうか。そのいずれかを自ら占っていく訳ですが、まあ結論から言えば、どっちもしていくのではないでしょうか。
創造目的だけで巣をつくる蜘蛛なんていないし、逆も然り。彼らはそれについて自分を責めることもなければ、余計な言い訳をすることもありません。
人間だってそんなふうに、素直に認めてしまえればいいのかも知れませんね。
今週のキーワード
清濁併せ吞む