いて座
卑屈な町で前を向く
若き日の詩人の肖像
今週のいて座は、茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」という詩のごとし。あるいは、太陽の光を受けた肌の冴えを堂々と放っていこうとするような星回り。
1926年生まれの作者の初期作品の一つであるこの詩は、戦中から戦後にかけて当時の若い女性が何を感じ、周囲の男性たちをどう考えていたのかを象徴的に表した作品と言えます。
初めは次の四行から。
「わたしが一番きれいだったとき/街はがらがら崩れていって/とんでもないところから/青空なんかが見えたりした」
敗戦後の日本では、男たちは意気消沈して反省を繰り返し、彼女にはそれが随分としょぼくれて見えたのでしょう。
「わたしが一番きれいだったとき/わたしの国は戦争で負けた/そんな馬鹿なことってあるものか/ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩いた」
この心意気こそが、その後の彼女の活動の原点であったのかも知れません。そして最後にこう結ばれていきます。
「わたしが一番きれいだったとき/わたしはとてもふしあわせ/わたしはとてもとんちんかん/わたしはめっぽうさみしかった だから決めた できれば長生きすることに/年とってから凄く美しい絵を描いた/フランスのルオー爺さんのように/ね」
立春に続き、10日(月)にはいて座から数えて「精神的成長」を意味する9番目のしし座での満月を迎えていく今週のあなたもまた、精神に張りを取り戻していくべく魂の狼煙をあげていくことがひとつのテーマとなっていくでしょう。
しっかりと大地を蹴って
「ところで、いま何をしているの?」と聞かれたら、あなたならなんと答えますか。
惰性で続けているルーティンワークや、閉塞感の中で疲弊している日常については、口に出すのも厭わしいでしょう。
例えば、かつて北海道を開拓した屯田兵たちは、平時に農業を営むかたわら軍事訓練を行い、戦時には兵として戦うことを前提に生活していましたが、それはどこか若かりし日の茨木のり子にも通底するところがあったように思います。
彼らほどとまではいかないにせよ、今週のいて座も少し先の未来を見据えつつ、力強く大地を蹴って街を歩いていきたいものです。
今週のキーワード
平時に戦時を重ねる