いて座
川を横断する者
画竜点睛
今週のいて座は、「猫の妻炎のまなこさだめたり」(福島小蕾)という句のごとし。あるいは、腹を決めて攻勢に転じていくような星回り。
「猫の妻」とはさかりのついた雌猫のことであり、一句を画に例えれば、春情をめぐる冒頭の一語は素描のデッサンと言えます。一方、どこか日本人的な淡白とは趣を異にする中華的な底知れなさを感じさせる「炎のまなこ」は色彩の技巧でしょう。
そして、最後の「定めたり」こそが画竜点睛の点睛であり、一句の命となっています。これによって猫は生きものとなり、炎のまなこを持つ女猫に“気”が宿って今にも飛びかからんとする凄味が生まれてくるのです。
人間というものの表と裏、はかなさと凄味の両方を知っている人でなければ、こういう句は作れないでしょう。
2月2日(日)にいて座から数えて「仕上げ」や「最終調整」を意味する6番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、このタイミングでいまの自分に足りないもの・欠けているものを見定め、今後の算段の腹を決めていきたいところです。
表現者の試練
「こんな思い付きなんて、きっと取るに足らないちっぽけなものだ」
こんな風に、浮かんできたアイデアを自ら退けたことはこれまで何度もあることと思いますが、同時に、そうして放置したアイデアが後で他の誰かの作品や仕事として、よそよそしげな威厳をもって自分のところに戻って来たという経験も一度ならずあるのではないでしょうか。
あなたが何かを表現したり、創り出す側の人間である限り、あなたの前には「自分なんて」や「不可能」といった幾つもの異称を持った川が流れていて、それは常にためらいや躊躇の原動力として、あなたを襲い続けるでしょう。
猫の目を「炎のまなこ」と表現して見せたのは、少なくとも日本語では掲句の作者が初めてだったのではないかと思いますが、先にも書いたように、それは一句の中でもメインの扱いではありませんでした。
今週のあなたもまた、渡る前はとても渡り切れないように見えた「川」だって、思いきって渡ってみれば、ただ川に過ぎないのだということを改めて思い知っていけるはず。心して渡って行くべし。
今週のキーワード
アニメーション