いて座
うつろいと炎
闇と光の対比
今週のいて座は、「とつぷりと後ろ暮れゐし焚火かな」(松本たかし)という句のごとし。あるいは、慌ただしい中にも豊かな静けさを感じていくような星回り。
冬は日が暮れるのが早い。そのせいか、年末になると毎年のように誰かが口にする「今年もあっという間だった」という言葉を聞くと、なんとなく自分でも「そうかもしれない」と感じてしまうもの。
けれど、本当にそうだろうか?
いて座のあなたにとって、「拡大と発展」の木星があなたの人生を良くも悪くも賑やかなものにしてくれたこの1年は、そのすべてを思い出すのも難儀するくらい太く長い時間だったのではないでしょうか。
掲句においても、「とっぷりと後ろ暮れ」という書き出しからは、自分の流れの速さに対する不安や焦りが漂っていますが、それは「焚火かな」という結びで焼き払われます。時は過ぎ去っても、その中で灯った炎は胸の中で燃え続けるのだ、と。
いよいよ12月3日(火)に木星がいて座から数えて「血肉」を意味する2番目のやぎ座へ入っていく今週のあなたは、約1年のあいだの経験のエッセンスが自分の中に何が残っているのか、改めて確認してみるといいでしょう。
二つのレベルの間を流れゆく
人生とは、常にうつろいゆく風景のようなものと言えます。
たとえば、嵐の日の海を猛烈な風が吹きつけていたとしても、ざわめき波立つのはあくまで海の表面のみ。その下には深海が静けさがどこまでも広がっている。逆に、どんなに重苦しく不透明な海であったとしても、海面に出てしまえば、そこには日の光を浴びてきらきらと輝く穏やかな光景が広がっているものです。
表層と深層、人生には常にふたつの異なる顔がその時々の表情を浮かべており、健全さとは、そうしたふたつの風景を行き来する、潮の流れのようなしなやかなアイデンティティーが保たれている状態なのだと言えます。
もし今あなたが青白い顔をした金太郎飴のように特定の顔だけにはまり込んでいるのなら、視線を置いているレイヤーを切り替えること。
大きなサイクルの移り変わる時というのは、そういう切り替えに対する習熟ということもテーマになってくるものです。
今週のキーワード
太陽(未来)と月(過去)のはざまで