うお座
華を愛でるということ
空即是色
今週のうお座は、「空ならむ空だと思ふ かつ思ふ 万有(ものみな)空であることが華」(高野公彦)という歌のごとし。あるいは、自分なりに「色」を「色」として愛でる心を取り戻していくような星回り。
この場合の「空」は、私たちの頭上に広がる青空のことではなくて、仏教の根本教義である「一切皆空」のこと。すなわち、あらゆる現象や存在(=色)には実体がないという意味での「空」である。
そういう意味では、「万有空であることが華」とは「万有空であることが色」とも言い換えられるでしょう。
つまり、人生で起きているどんな出来事や自分自身でさえ、雨上がりの青空にかかる虹のようなものであり、だからこそ美しく見えるのだと。
難しい理屈はこの際脇においておきましょう。感覚的かつ本能的に、自分の身の上や縁を結んで隣り合う誰かを虹のようなものとして感じていくこと。
それらをどこまで「華」と見なしていけるかどうか。それが今週あなたのテーマとなっていくのだと思います。
愛するための感性を
かつてD・H・ロレンスは、「現代人は愛しうるか」というテーマで書かれた文章の中で、まさに掲句の「空即是色」的世界観にも通じる宇宙的でデリケートな感覚を鮮やかに披露して見せました。
その冒頭は
「文明とは何か。それは発明品などよりも感性の生活のうちにこそ、明瞭な姿をあらわすものだ」
という一文から始まります。
身の内に閉じ込められながらも、同時にいきいきとした宇宙の一部でもあることを実感するために。私たちに「一切皆空」であることを忘れさせてしまう文明の明かりや装置のスイッチを、ときどきオフにしていくこと(色即是空)が必要なのです。
またその意味では、男女の仲にあっても、互いをあんまり「個人」として見なしすぎるのは、感性的とは言えないでしょう。
今週のキーワード
私たちは虹として在る