うお座
縁を見なおす
痕跡を遡る
今週のうお座は、「きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり」(永田和宏)という歌のごとし。あるいは、今の自分と分かちがたい誰かや何かとめぐり会う前と後でいったい何が変わってしまったのか、突き止めていくような星回り。
掲句の冒頭が「ぼくに逢う以前のきみに」ならば、青年期の初々しい感傷になるのだろうが、そうではない。ここで歌われているのは、大人になろうとしている若き魂のたゆたいであり、自分の力だけではどうにもできないままならなさである。
しばしば、好いた惚れたの人の性というのは自分のコントロールをこえたところで起きてくるものであり、気付いた時には相手との出会いを通じて自分のどこが変わってしまったのか分からなくなっていく。
「ぼく」もちょうどそんな風に、じぶんの奥深くに刻みつけられた相手の痕跡を、その始まりへ向かって遡ろうとしているのでしょう。今週はそんな「ぼく」に自分を重ねてみるといいかもしれません。
自由な海を取り戻す
東北大震災の後に、やたらと「絆」という言葉が流行りました。確かに自然発生的にポツンとポツンと生まれてくる分には美しいものですが、押しつけられた時にこれほど嫌な言葉もないでしょう。
それで、なぜこれほどまでに嫌に感じるのかと考えてみると、絆というものは陸地的な発想のものだから。つまり、橋をつくって、孤立した島(人間)同士をがっちりと結んでしまいましょう、安全な陸地を拡大していきましょうと。人間関係そのものを巨大なコンクリートのかたまりのようにしていくのです。
それと対極的なのが、島的な発想と言えます。つまり、一見わたしとあなた、島と島とがそれぞれ孤立していたとしても、ときどき舟で行ったり来たりすればそれで十分じゃないか、と。
今週は、いつの間にか見失っていた自由な海を取り戻し、縁のあり方そのものを見直していくことがテーマとなっているのかもしれません。
今週のキーワード
海洋民的関係性