うお座
宇宙をひらく
今週のうお座:熊楠と顕微鏡
今週のうお座は、顕微鏡の中に宇宙の不可思議を見た南方熊楠のごとし。あるいは、宇宙的なパワーを受ける具体的な受け皿や乗り物を、適切に打ち立てていくような星回り。
粘菌の生態の観察をとおして生命の神秘を感得した熊楠は、ある手紙の中で次のように書いていました。
「細微分子の死は微分子の生の幾分または全体を助け、微分子の死は分子の生の幾分または助け、ないし鉱物体、植物体、動物体、社会より大千世界に至るまでみな然り。ただしこの細微分子の生死、微分子の生死、ないし星宿大千世界の生死は斉一に起こり一事に斉一に息まず、常に錯雑生死あり。」
つまり、生と死を分離することができないならば、生は死を、死は生をはらみながら、複雑に入り混じりつつ全体運動をつづけるのだと。
生命現象の真実の姿とは、死ぬこともなければ生きることもない、不生不滅なのだと、そのことを熊楠は顕微鏡の下の粘菌を通してまざまざと実感していったのです。
あなたにとって、熊楠にとっての「顕微鏡」にあたるものは何でしょうか?
真っ白なキャンバスか、自分の肉体そのものか、あるいはまっさらな土地か。何かしらひとつ、そういうものを想定し、そして最初の一筆を入れていくこと。
それが今週だけでなく、今後のあなたにとって大事な一歩となっていくでしょう。
遊びの天才
「万華鏡の中に石や貝殻、ガラスの破片などを入れて遊んでゐた。飽きたのでナメクジと巻貝を入れると蝸牛が這ひ出した。面白いので男と女を入れてみると女が妊娠した。次にタンカーと財宝を入れると海賊船が出てきて私は船長になった。
太陽を入れようとしたら、船が燃えた。」
(中村安伸、『虎の夜食』)
こういう「遊び」はできそうでなかなか出来ないものですが、ある意味で熊楠は遊びの天才だったのだと言えます。だらこそ、何日も昼夜問わず、顕微鏡を観察し続けることができた。
今週は「遊び」の時間をきちんと確保することから始めていきましょう。
今週のキーワード
遊びをせんとや生まれけむ