うお座
ァんた、婆カ?
身体の前線を生きる
今週のうお座は、「わがままボディー」への道。あるいは、自分を作り上げていくのではなく、自然に解きほぐしていこうとするような星回り。
現代というのは、社会システムや情報インフラがあらゆる現実を呑み込んでいくという意味で、仏教でいう「色即是空」の世界にますます近づいている時代と言えますが、ではそうした社会で私たちはどう生きていけばいいのか。
例えば、整体指導者の片山洋次郎は『オウムと身体』のなかで、高度に情報化がすすんだ社会で混乱することなく生きていくためには、かつてのオウム真理教のように超能力を開発したり、超越的な身体をつくっていくというのではなく、むしろ力みのない素直な身体という意味で、各自の個性に合った「わがままな身体」でいることが大切なのだと言います。
片山は「時代の変化の前線は、大脳的知の領域ではなく、身体そのもののレベルにある」のだとも述べているのですが、ここで思い起こされる人物に、最近ショート動画などでもよく見かけるようになってきたセレブマダムタレントのアレン様がいます。
もともとはかなりの美少年だったのが、整形や体型のアップデートなどいくつかの形態変化をへて、現在は極上のマダムキャラへとたどり着いているのですが、興味深いのは、食べたいものは我慢することなく食べまくってきた結果、かなり「ゆるキャラ」のようになってきた身体のことを、みずから度々「豊かさの象徴」と呼んでいるのです。
あれこそ、未曽有の社会空間に置かれた身体から生まれてきた新しい哲学や宗教の誕生を象徴するシーンであり、「身体の前線」から立ち上がる身体の言葉のようなものと言っていいでしょう。
6月29日にうお座から数えて「固有の身体性」を意味する2番目のおひつじ座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、そんなアレン様をよく見習って、どうしたら自身をゆるキャラ化していけるかを探っていきたいところです。
「素足」の感覚
では「わがままボディー」になるためには、具体的にはどうしたらいいのか。素直な身体への回復の過程を歩んでいく上で、忘れてはいけない感覚として「素足」の感覚が挙げられます。
「素足」とは、何よりもまず、ひりひりとした新鮮な感受性である。また、正確な平衡の源泉である。総じて、大地の直接の感覚である。(…)さらに、大地の感覚は「地下の異次元世界に通じ」その底から患者を仰ぎみる感覚をもさずけてくれる
こう書いていたのは、霜山徳爾の『素足の心理療法』の書評を書いた精神科医の中井久夫でした(『私の「本の世界」』)。書名の意味するところは、技法以前の著者が心理療法に臨む「通奏低音」において、「病む者へのつつましい(小文字の)畏敬」なのではないかとも述べていましたが、これは今のうお座の人たちにとっても大事なことなのではないでしょうか。
「靴をはかない」ということは不偏不党という気楽なことではない。自分の素足で歩くということは「雪の上を裸足でよろめいて行く」と述べられてあるとおり、何によっても守られていないということである。
今週のうお座もまた、いま自分がどんな既成の靴(正しさの残骸)を脱ぎ捨てようとしているのか、改めて思い定めていくことになるでしょう。
うお座の今週のキーワード
通奏低音としての「素足」