うお座
空を仰いで気が晴らす
新宿の渡り鳥たち
今週のうお座は、『新宿ははるかなる墓碑鳥渡る』(福永耕二)という句のごとし。あるいは、停滞していた精神に流動性をもたらしていこうとするような星回り。
以前まではそれほどいい句はだと感じなかったが、全国各地から歌舞伎町のトー横界隈に集まってきた子どもたちにまつわるニュースがネットで見ないことがなくなってからは、改めて臨場感を覚えるようになってきた。
句の実状としては千葉方面からみた新宿らしいが(当時は高層ビル群などなかったので遠くからも新宿まで見えた)、まさに高層ビルが墓碑のような佇まいを醸している昨今のすさんだ現実が、古ぼけていた句に再び生命を吹き込んだという訳だ。
流れものばかり集まる新宿の住人は、まさに渡り鳥のよう。しかし、実際にはそこから先、どこへ飛んでいけばいいのか見当もつかず、トー横キッズたちはあたら若い命と時間とを裏経済を経由して蕩尽するばかり。
そういう意味では、飛んでいく先が本能的に分かっているぶんだけ鳥たちの方が、よほど人間よりも自由であるように感じられてくる。願わくば、不自由な人間たちにも、翼を広げて飛んでいくだけの広い空を。少なくとも、空を仰ぐだけの余裕くらいは与えてほしいもの。案外、そうしたわずかな余裕の有無が、生死を分けることもあるのだ。
10月29日にうお座から数えて「訓練」を意味する3番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、できるだけ上を向いて歩いてみるべし。
新宿御苑の樹
例えば、同じ新宿でも新宿御苑をぶらぶらと歩いてみると、葉を茂らせている樹木というのは、ただ目の前に見えているこんもりとした輪郭にとどまっている訳ではなく、目に見える以上にたいそう巨大な空間をあたりに占めていて、そこでエネルギーを発揮しているということが分かってきます。
同様に、私たち人間もまた皮膚の内側に閉じられた存在として考えない方がいいでしょう。
体表はたんに目に見える輪郭に過ぎず、私たちの体にひそむエネルギーはいつもどこかにはみ出しており、その意味で幼児が自分の体がどこにもでも移動できるという幻想はむしろ幻想ではなく、むしろ「延長の自由」というリアルなのだと言えるかもしれません。
今週のうお座もまた、いつも以上に自分自身を閉じた系としてではなく、開いた系として実感していきやすいはず。
うお座の今週のキーワード
「延長の自由」を謳歌していくこと