うお座
はしっこの交わり
君ならきっと
今週のうお座は、『白服にてゆるく橋越す思春期らし』(金子兜太)という句のごとし。あるいは、目の前を通りすぎ交錯していく運命を見届けていこうとするような星回り。
「ゆるく」そして「思春期らし」という言い方から、掲句において橋を渡っている少年(少女)は、いかにも清々しく、力強く、颯爽と橋をわたっている訳ではないでしょう。むしろ、のろのろ、よろよろとした足取りで橋を渡っており、作者もその様子がどうにも気になって仕方なかったのだと思います。
じりじりと照りつける太陽に、気怠そうな少年(少女)の歩行。その鈍く重い歩みの原因を、作者は「思春期」の悩みゆえと見て取った。そしておそらく、みずからの思春期へととっさに心を飛ばしていた。それゆえに、掲句における作者の少年(少女)を見つめるまなざしはどこか優しく、愛情にみちている。
今はつらくてしんどくて、それを不甲斐なく感じたり、誰かを憎んでしまったりするかもしれない。でも、君だったら、きっと乗り越えられるさ。だからまずは、重い足をひきずってでも、橋を渡り切ろう。それを私も見届けてやろうじゃないか、と。
6月11日にうお座から数えて「行き交い」を意味する11番目のやぎ座へと「死と再生」を司る冥王星が戻っていく今週のあなたもまた、そんな作者の慈眼を見習っていきたいところです。
うさんくさくて熱い場所
然るべき相手と出会うには、然るべき場所に出向いていく必要があります。例えば、17世紀後半のイギリスであれば、「コーヒーハウス」という場所がありました。
当時ロンドンで新たな嗜好品として大ブームとなっていたコーヒーですが、ただ、なぜか潜在的に宗教や伝統的な社会制度や価値観とは折り合いが悪いようで、当時も保守的な人たちからは反社会的かつ反キリスト教的な「麻薬」であるとか、青少年やの荒廃を招いているのではないかといった認識も根深くあったようです。
その一方で、ニュートンが『プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)』で披露したアイデアのほとんどはコーヒーハウスで芽吹いたものでしたし、アダム・スミスの『国富論』の原稿もやはりコーヒーハウスで書かれた他、コーヒーハウスではしばしば熱い議論が繰り広げられ、異分野の人たちが集まって意見交換をする場となっており、「ペニー・ユニバーシティ(一銭大学)」などという愛称まであったのだとか。
同様に、今週のうお座もまた、そんなかつてのコーヒーハウスのように、クリエイティブな発想を生み出される場へと自主的にアクセスしてみるといいでしょう。
うお座の今週のキーワード
新しい時代の芽ははしっこに芽生える