うお座
雑談の効力
批判精神を培う
今週のうお座は、かつての時代の「面白い女(おなご)」のごとし。あるいは、権威的な体制への批判精神を培っていこうとするような星回り。
宮本常一が1960年代に書いた『忘れられた日本人』によれば、田植えの際に早乙女たちのあいだで交わされる色話は、去年の話のくりかえしであることも多かったそうですが、そうでない話の方がむしろ多かったのだそうです。
つまり、リアルタイムに自分が実体験したり、見聞きした話を“ネタ”に盛り込んでいったのであり、それを隣り合った二人でひそひそ話していると「ひそひそ話は罪つくり」と必ず誰かが言い、公然と話されるのが当たり前という空気があっただけに、とにかく明るく健康的であったのだそうです。もちろん、そこに至るまでには長い歴史があったはずですが、こうした話を交わし合うことで、女たちは男たちへの批判力を培っていったのです。
2月14日にうお座から数えて「探求」を意味する9番目のさそり座で下弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、そうしたかつての「面白い女(おなご)」の持っていた力の秘密に身をもって触れてみるといいでしょう。
術者の心得を問われる時
ここで下世話な話からいったん離れますが、医学の父・ヒポクラテスの言葉として今日もっとも一般的に知られているのは、「人の一生は短く、アート(術)は長い」という言葉でしょう。ただ、これは彼が芸術至上主義であったということではまったくありません。
古代ギリシャにおける「アート」とは医術を含む技法のことであり、芸術を含む創意工夫は別の「テクネー」という言葉で表されていたのです。つまり、先の言葉はあくまで医術の研鑽は一生かけて行うものであるという、医者としての心得を説いたものでした。
しかし、ヒポクラテスは何より医術を、病める人、悩める人を癒していくためのものとして位置づけていました。その考えを端的に表したのが次のような彼の言葉です。
人への愛のあるところには、またいつも(癒しの)テクネー(創意工夫)への愛がある
医者である以前に愛すべき者をもつひとりの人間として、彼が「術者の心得」をどのように捉えていたか、非常に示唆に富む言葉であり、そのまま今週のうお座への指針にもなっていくはず。
うお座の今週のキーワード
色話とはテクネーである