うお座
ことばに灯をともす
生きる疲れを癒やしてくれるもの
今週のうお座は、「霧の向こうの世界」への手紙のごとし。あるいは、生きがいを燃やしていこうとするような星回り。
イタリア文学者であり作家でもあった須賀敦子は、イタリア留学を経てミラノにあるコルシカ書店に勤めたことをきっかけにイタリア人のペッピーノと結婚し、日本文学のイタリア語への翻訳に従事したものの、夫の急逝を機に日本へ帰国し、晩年になってから小説家として知られるようになった人です。
結婚生活はわずか6年という短い期間でしたが、夫を失った彼女は夫が愛したイタリア詩人サバの詩に深く寄り添うようになり、後半生はサバの詩の和訳と紹介に情熱を注ぎました。例えば、サバの詩には次のような作品があります。
石と霧のあいだで、ぼくは
休日を愉しむ。大聖堂の
広場に憩う。星の
かわりに夜ごと、ことばに灯がともる
人生ほど、
生きる疲れを癒してくれるものは、ない。
「石」とはこの世のこと、そしてあの世は「霧」の向こうの世界としてここでは表象されています。彼女にとって小説を書くとは、「霧」の向こうの世界に行った人々へ手紙を書くことに他ならず、それこそが彼女の生きがいだったのでしょう。
言わば、彼女は先のサバの詩をそのまま生きたのだと言えます。そして1月7日にうお座から数えて「愛情表現」を意味する5番目のかに座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、ふと振り返った先に霧が流れる景色を目にすることができるかも知れません。
息の行き先
いわゆる大往生と言うのは、深く息を吐き切った後に亡くなっていくことが多いそうですが、「息を引き取る」というのは、「潮が引く」のと同じで、「元に戻っていく力が働いている」のだと言えます。つまり、“もと”の何かに引かれている、あるいは、引っ張っている何かがそこに現れている、ということでもあるはず。
では、この“もと”とは一体なにか?(かみさま、自然、宇宙など)つまり、息を引かれていくということは宇宙に帰るとか、自然に帰るとか、そういうことなんですね。
そうすると、「霧の向こうの世界の人に手紙を出す」ということも、ただやみくもに思いを伝えたり念じたりするのではなくて、“もと”の何かが息を引き取ってくれやすいように、安らかに息を吐いていくのでなければならない。
あるいは、引いている“もと”の側と引かれているこちら側とのあいだで、できるだけ抵抗感を減らしてスムーズにつながっていく必要がある。
その意味で、今週のうお座は、そうした自分をスムーズに引いてくれる大きな呼吸の中で、息を深く吐けるよう調整してみるといいでしょう。
うお座の今週のキーワード
声と息の一致