うお座
九勝六敗を狙う
休むのが当たり前であるように
今週のうお座は、『休んだり休まなんだり梅雨工事』(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、いかに活躍しいかに目立つかを考えるよりもその逆を意識していくような星回り。
梅雨時の工事現場の何気ない光景を詠んだ一句。しかし、これはあくまで“ありきたり風”というだけであって、「休んだり休まなんだり」と表現されるほど、実際には雨が降ったら休むのが当たり前であるような風潮は日本社会には存在しないでしょう。
むしろ、可能な限り休まず、雨が降っても電車が止まっても体調がひどかったとしても、とにかく会社に出社するべし、というのがいつの間にか日本的美徳ということになってしまった訳ですが、それはさすがにどこかおかしいと感じている人も少なくないはず。
ここで伝説の雀士であり作家でもあった阿佐田哲也が、社会の裏と表で重ねてきたさまざまなギャンブル経験を通して、「九勝六敗を狙うこと」というセオリーを見出したことを思い出せば、やはり全部の場面で「休まない」ことなんて無理なんだから、どこで働くかを意識するのと同様に、どこで休んでおくかも意識しておかなければならない、といった掲句の前提にある認識にも、確かな説得力があるように思います。
その意味で、30日にうお座から数えて「安息」を意味する4番目のふたご座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、いかに英気を養うか、そもそも、どれくらいの塩梅で自分は休息を欲しているのかをしっかりと考えていきたいところです。
エントロピーの増大に抗して
エントロピーとは「混沌」という意味で、宇宙の大原則として、あらゆる物事はエントロピーが増大する方向にしか動いていきません。秩序あるものは時間の経過とともにカオティックに混乱していき、一点に集まったエネルギーもやがては分散していく。つまり、いくら整理整頓した机も散らかるし、熱烈な恋もいつかは冷めてしまうのだと。
そして、そんなエントロピーの増大に絶え間なく抵抗しているのが、すべての細胞を入れ替え続けることで死を免れて現に「生きて」いる人体であり、生命の働きなんです。
興味深いことに、生命は細胞が自然に壊れる前に先回りしてみずからを壊し、その不安定さを利用して新しい細胞を作り出す活動をしているそうなのですが、それでも新たに作られる細胞より徐々に壊れていく細胞が増えていくことで、人は老い、死を迎えていきます。
今週のうお座は、ある意味でこうした生命が細胞レベルで行っている宇宙法則への抵抗とそのための先回りを、日常的な習慣に重ねていこうとしているのだとも言えます。
つまり、個人としての弱さや未熟さ、老い、死などを受け入れつつも、強さや若さ、しぶとさやみずみずしさを湛えた自分へと生まれ変わるための“先回り”的な休息を取っていけるかということがテーマになっていくの知れません。
うお座の今週のキーワード
アポトーシス的休息