うお座
偶然発、必然行きの汽車にのろう
ブルースの本質
今週のうお座は、W・C・ハンディの作曲エピソードのごとし。あるいは、非直線的で、非系統的な思考の流れに身を任せていくような星回り。
ブルースを譜面の形で本格的に広め「ブルースの父」と呼ばれたW・C・ハンディは、1903年の米国南部ミシシッピ州の町はずれのとある鉄道交差点で深夜に汽車を待っていたときの体験をもとに、『イエロー・ドッグ・ブルース』という曲を作ったとされています。
旅の途中だったハンディはいつまでもやってこない汽車を待ちつつ地面に座り込むうち、いつの間にか居眠りをしていたそうですが、不意にギターのかすかな音で目が覚めると、つづけて痩せてみすぼらしく老いた黒人の歌声が聞こえてきたのです。
さあ行こう、南部の鉄道がイエロー・ドッグ線と交差するところへ
当時の黒人労働者たちは南部の鉄道網を唯一の移動手段として利用しながら生きていた訳ですが、そうした移動感覚や交差感覚は、やはり旅の途上で耳にした老人の「ブルース」を元にした曲を譜面に落とし、それが各地のミュージシャンのあいだに広まり、根付いていったプロセスとも重なって、ブルースという精神運動の本質を形成していったように思います。
その意味で、5月1日にみずがめ座から数えて「遊び」を意味する3番目のおうし座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、無数の意味の遊戯的な祝祭をつくりだしながら一気に爆発していくブルース・ソングのように、様々な文脈とからみあい、響きあっていくべし。
半身と戯れる
多くの人は、この世界の主役はあくまで人間であると考えていますし、彼らはその役回りに応じるように声高に自らの考えを懸命に述べ立て、打ち建てた目標にひた走っています。
しかしその一方で、大地や草花など、環境はつねに控えめで、自己主張する代わりに、ただ作物を実らせ、花咲き、周りの環境と交わって生きています。
にも関わらず、いやそうだからこそ、人々は遠い彼方の何かを見つめながら、しばしば足元のスミレの花を踏みつぶしていく訳ですが、今週のうお座は、むしろそうした足元の花の方にスポットライトを当て、ある意味では彼らこそ主役なのだという「発想の逆転」を試みることがテーマなのだとも言えるかも知れません。
かつてオルテガという人が「私を取り巻くこの現実の領域は、私という人間の他の半身なのだ」と書きましたが、この言葉はまさに今週のうお座の人たちにとって大いに指針となっていくはずです。
うお座の今週のキーワード
旅の途上の交差感覚