うお座
大いなる養生
※1月10日〜16日の占いは、諸事情により休載いたします。誠に申し訳ございません。次回は1月16日(日)午後10時に配信いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
交わりの作法
今週のうお座は、狩人が守るべき獲物の解体の作法のごとし。あるいは、日常の惰性から離れた「美しい行動」をとることが要求されていくような星回り。
多くの伝統社会において、狩猟というのは、日常の延長では絶対に不可能な非常に危険な領域ですから、もし狩人が動物を仕留めたとしても、いきなり無造作に解体したり、運搬することは厳禁であり、ほとんど決められた作法に従って、きわめて儀礼的な身振りで、注意深く行われたものでした。
例えば、北アメリカ大陸の北西海岸内陸部の高原地帯に住み、山羊や熊を狩り、ベリー類を採集して暮らすトンプソン・インディアンと呼ばれる人々は、狩人が守るべき作法を(山羊の立場からの語りにおいて)次のように定めています。
人間たちは山羊の解体をはじめる前に、顔を黒く塗るようにしなさい。舌と肺と心臓の上には聖別した羽毛をかけなさい。そして残りの体は、家の火の上にかけて、乾かしなさい。それが私たち山羊にはよく療法となります。骨と臓物は注意深く集めて、水に沈めなさい……山羊の頭を調理するときには、顔の部分を赤く塗り、羽毛をかけて、鼻を火のほうに向けて置きなさい……頭の部分を焼いているときには、人間は完全な沈黙を守らなければなりません。(レヴィ=ストロース『山猫の物語』)
同様に、2022年1月3日にうお座から数えて「ネットワーキング」を意味する11番目の星座であるやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、最大級の敬意と誠実さをもって他者と分け合う何かしらの話題や題材を取り扱っていくことが求められていくでしょう。
人間の向上とは何か
「整体」という言葉の産みの親である天才的治療家の野口晴哉(のぐちはるちか)は、語録集『偶感集』に収録された「雨」という断章の中で、「人間の生きているのは苦しむ為だ。その苦しむことが楽しくなる迄、生きていることを養生という」と述べています。
これに対しては、犬や猫や他の生き物はみな苦しければ逃げるのに、人間だけがそうしないのは本能が壊れているからだという指摘もあるかも知れません。
しかし野口は関東大震災を経験していましたから、そのことはよくわかった上で上記のように述べたのでしょう。そして、こう続けるのです。
人間は自分の心身が苦しいことだけが苦しいのではない。他人の苦しみにも苦しむ、世界の一切の動きにも苦しむ。(中略)動物の苦しみから人間の苦しみへの展開こそ、人間の向上だ。その苦しみに徹し、苦しむことが楽しくなる迄、苦しむことだ。
おそらく、狩人に求められる「美しい行動」の本質にあるのも、こうした意味での苦しみであり、個的生命の死守を超えた、命そのものに対しての養生なのではないでしょうか。その意味で、今週のうお座もまた、これまでの自分の活動のどこにさらに力を入れ、どこで力を抜いたらいいのか、自然と軌道修正がかかっていきやすいはずです。
うお座の今週のキーワード
養生=アート