うお座
運気の中動態
われを動かすもの
今週のうお座は、「冬籠われを動かすものあらば」(高浜虚子)という句のごとし。あるいは、「機先を制する」ということを実行していこうとするような星回り。
どっかと腰を落とし、容易には動かないぞというていで、どうだ動かせるものなら動かしてみろ、と言う風にも、動かしてくれるだけのものがあればなあ、とも読むことができる一句。その意味でどこか、イソップ寓話で北風と太陽が自分に何かしてくる気配を察知しながら道を行った旅人の心理のようでもある。
この句を詠んだとき、作者は73歳。終戦をへて疎開先からじつに4年ぶりにもともと住んでいた鎌倉に帰ってきたところだった。しかし、「動かす」とは住居のことだけを指しているわけではなく、このさき自分が心血を注ぐべきは何なのか、ということを冬ごもりのあいだ、じーっと考え抜いていたのだろう。
一見すると岩のように落ち着いて見えていた作者の精神は、そのじつすでに煮えたぎりつつあったのかも知れない。同様に、12月29日に拡大と発展の星である木星が、自分自身の星座であるうお座に移ってくる今週のあなたもまた、向こうしばらくみずからを大きく突き動かしていくことになるそのきっかけを感じていくことができるはず。
人事を尽して天を仰ぐ
「天は自ら助くる者を助く(Heaven helps those who help themselves.)」という英語のことわざがありますが、浦沢直樹の漫画『バカボンド』にも、無謀にもひとりで柳生の城に挑んでいく際に、「(人は笑おうと)天は笑いはしない」という似たセリフが出てきます。
この場合の「天」とは、まさに先の「我を動かすもの」としての「天命」のことであり、もっと端的に言ってしまえば「自分の中の何か得体の知れないもの」と言ってしまってもいいかも知れません。その意味で、「天を仰ぐ」のと対極的なのは、例えば友だちの反応や、世間がどう思うかどうかで決断を成そうとする態度でしょう。
そういう時というのは大抵が、自分を世界の端っこで縮こまって生きているものと感じており、無意識のうちに自分はきっと不幸なはず、幸福にはなれない、というイメージを浮かべてしまっているはず。
その意味で、今のうお座のテーマは、「自分の中の得体の知れないもの」としての天を大きく広げ、改めてそこに向かって身を投げ込んでいくこと。不要な思い込みさえ排していければ、案外「天」は、「北風と太陽」の太陽のような形でそれに応えてくれるのではないでしょうか。
うお座の今週のキーワード
得体のしれない私を生きる