うお座
常識を食い破る
深夜のダイバー
今週のうお座は、暗黒の世界を漂うダイバーのごとし。あるいは、常識破りの沼、いや海にこそハマっていかんとするような星回り。
「深海のエイリアン」とも呼ばれるタルマワシは、海中を漂って暮らす体長1~2センチメートルほどのプランクトンで、エサとなる他の生物をただ食べるだけでなく、それらのエサ生物の体を外壁を残してくりぬき、自分が住むための半透明の「家」に作りかえてしまうという恐ろしい特徴を持っています。
しかもそれだけでなく、映画『エイリアン』のように、卵を体内で繁殖させて孵った子供がある程度大きくなると、体を食い破って外へ出ていく。つまりタルマワシのさながら樽のような「家」は、同時に子供たちの「保育の場所」でもある訳です。
これは喩えるなら人間の男が子を産んだりするくらい、これまでの生命の進化論が通用しない常識破りの話で、最近ではダイバーたちは綺麗なサンゴとかを見るよりも、真っ暗な海でぷかぷか浮きながら、タワマワシみたいなこれまでよく正体が分かっていなかった生物を発見したり、観察したりする人が増えているのだそうです。
12月4日にうお座から数えて「取り組むべきこと」を意味する10番目の星座であるいて座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、そうした自分なりに取り組みがいのある神秘世界へと改めてダイブしていくことがテーマとなっていくでしょう。
流れとしての思考
液体、あるいは流動体のようなぴちゃぴちゃした私、というのは固定的なアイデンティティを押し付けられ、特定の土地に繋ぎ止められて生きている近代人にとって、一見ふしぎな感じを覚えるかも知れません。しかし、「考える」という機能こそが人間を人間たらしめてきたことを考えると、そうなるのも至極当然のような気もしてくるのです。
例えば、「考える」という言葉はもともと「か身交ふ(かむかふ)」から来ていますが、最初の「か」には意味はなく、身をもって何かと交わり、境界線をあいまいにしていくことで、そこに新たな思考を生みだしてきました。
闇の中で揺れるあやしい光に、風のそよぎ、月から漏れる柔らかな音楽。そういうものと直接向き合いながら環境をたゆたっているうちに、外なる自然と内なる自己が交わって、親密な関係となり、そこでひとりで部屋の中で考えているだけじゃ思いつかないようなことが引き出され、既存の常識が破られていく。
そこには媒介としての身体と、流動体のようにゆらめき絶えず変化していく私があり、そこで思考がひとつの潮流となってどこかへ流れていくとき、その流れは身体を通して交わった者の思考をいつの間にか別次元へと連れ去っていくはず。今週はひとつそんなことを念頭に、できるだけ羽目を外していきたいところ。
うお座の今週のキーワード
連れ去ったり、連れ去られたり