うお座
思いも「馴れずし」のように
自分が好きであることが大事
今週のうお座は、「鮒ずしや彦根の城に雲かかる」(与謝蕪村)という句のごとし。あるいは、心臓の鼓動がいつもよりより一層高まっていくような星回り。
「鮒ずし」は近江の特産品で、馴れずしとも呼ばれる江戸時代のスローフード。あの独特のすえた匂いは苦手な人もいるかもいるかも知れませんが、作者はそれを好物としていて、近江の街道沿いの茶店などで食していたのでしょう。
また、「城にかかる雲」という表現も、古代中国の王が昼寝の夢の中で山の神女と契ったという故事にならえば、密会や情交を促す雲なのではないでしょうか。
その意味で、掲句はただ一通りの叙景を述べてみせたものというより、さり気ない仕方で表しつつも自身の高まる気持ちが抑えきれずに溢れだしてしまっている、とても「エモい」句なのだと言えます。
では、作者は誰に対してそのような高揚感を抱いていたのか。それは彦根という土地が、作者が師と仰いだ松尾芭蕉が愛した土地であり、遺言によりこの地に埋葬されていることを考えれば、もはや説明は不要でしょう。
10日にうお座から数えてやはり「高揚と解放」を意味する5番目のかに座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、いつも以上に自分がより自分らしくなっていくのを肌で感じ取っていくことができるかも知れません。
熟した縁を受け取っていく
ただ自己解放というとどうしてもファーストフード的に気が焦ってしまいがちですが、ユング心理学の大家であった河合隼雄は、治療過程の文脈で「なおる気のない人は、なおる気が起こるまで待ってもらう」というようなことを言っていました。
これは神経症であれノイローゼであれ、何らかのニューロティックな症状があらわれた患者というのは、いわば「選ばれている」人であり、意識を越えた世界から一つのサイン(例えば「夢」のような)をもらっている訳ですが、そうしたサインを大事にして、かつその意味するところを究明したいと自然に思えるまでにはある程度時間がかかる。時間をかけて、症状を乗り越える力を培っていく。逆に言えば、そういう力のない人に、夢分析などしても気の毒なだけだと言うんですね。
つまり、患者の方でも療法家との「合い性」や「縁」がなかったらダメで、時には最初に分析を断ってから二年か三年たってやっと「縁が熟す」ということだって珍しくないのだ、と。
その意味で、今週のうお座もまた、ゆっくりと出来上がっていく「思い」や「縁」というものの不思議を実感していくつもりで過ごしていくくらいでちょうどいいでしょう。
うお座の今週のキーワード
何か誰かを好きになれたこと自体が一つのギフト