うお座
この世の行き帰りを想う
こちらは6月21日週の占いです。6月28日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
取り残された者として
今週のうお座は、「孤(みなしご)の我は光らぬ蛍かな」(小林一茶)という句のごとし。あるいは、よくもわるくも周囲から浮いてしまって後戻りできなくなるような星回り。
作者五十八歳のときの句ですが、まえがきには「桐壺源氏三つのとし、我も三つのとし母に捨てられたれど」とあります。
『源氏物語』の光源氏が母の桐壺更衣に三歳で死別したことを受けて、自分も三歳で母をなくしたことにかけている訳で、つまりは掲句の「光らぬ蛍」という言い方の前提には、「光源氏」のイメージがあるのでしょう。
感傷的ないじけ句かと思いきや、しかし「光らぬ」という言い方をすることによって、一匹の蛍の存在が逆に鮮やかに浮かび上がってもくる、じつに秀逸な句とも言えるのではないでしょうか。
光らないけれど、光の敷物の上でに置かれているような印象で、ここには孤独な個体としての、切ないほどに明確な存在感をかみしめていくような、どこか深い実存の手触りがあります。
25日にうお座から数えて「愛を受けとる場所」を意味する11番目のやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、悪目立ちするならするで、とことん自身の実存を発光させていくべし。
どこから来てどこへ行くのか
恩田陸の『光の帝国』という小説は、この世界が言いようもなく怖い場所であると同時に、どこか懐かしい場所でもあることを実に絶妙に描いてくれています。
それは例えば、子供の頃に感じていた、家に帰ったらお母さんがいなくなっているのではないか、とか、帰りのバスで見知った停留所がいつまでも呼ばれず、このままどこか知らない場所へ連れて行かれるのではないか、といった感覚にも近いかも知れません。
僕たちは、無理やり生まれさせられたのでもなければ、間違って生まれてきたのでもない。それは、光があたっているということと同じようにやがては風が吹き始め、花が実をつけるのと同じように、そういうふうに、ずっとずっと前から決まっている決まりなのだ。
僕たちは、草に頬ずりし、風に髪をまかせ、くだものをもいで食べ、星と夜明けを夢見ながらこの世界で暮らそう。そして、いつかこのまばゆい光の生まれたところに、みんなで手をつないで帰ろう
あなたなら、自分の人生にどんな物語をイメージし、そこにどんな結末を思い描いていきますか?今週のうお座は、そうした自身をめぐる物語設定に手を入れてみるといいでしょう。
うお座の今週のキーワード
懐かしい恐怖