うお座
バラバラな自分をとりまとめていく
物語を一つにつないでいくもの
今週のうお座は、映画『マグノリア』におけるカエルの雨のごとし。あるいは、思いがけない偶然を深く受け止めていこうとするような星回り。
ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』(1999)は、現代のロサンゼルスを舞台に、富と力とに翻弄されている10人の男女の群像を描きつつ、大量のカエルが空から降ってくるという偶然によって演出されたラストに向けて不思議に絡み合っていきます。
こうした現象自体は実際に世界中で記録されており、英語では「rain of animals」(動物の雨)、日本では古くから「怪雨」として知られていますが、『マグノリア』においては「デウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)として働いていきました。
この用語は古代ギリシア演劇に由来し、劇の筋がもつれて解決困難になった局面で形而上的な存在の神を登場させ、人智を超えた策(あるいは現象)で劇を収束させる手法を指しますが、実際にポール・トーマス・アンダーソンは撮影が途中まで終わった段階で、カエルの雨が旧約聖書の出エジプト記8章2節に、神がモーセに語った言葉として、「わたしの民を去らせて、わたしに仕えさせなさい。しかし、去らせることを拒むならば、見よ、わたしは、かえるをもって、あなたの領土を、ことごとく撃つであろう」という記述があることを知ったのだそうです。そして、その偶然にびっくりしたり大変に喜んだ後で、「なぜ人は困難なとき宗教に頼るのか」を考えるようになったのだそうです。
6月2日に自分自身の星座であるうお座で下弦の月(意識の危機)を迎えていく今週のあなたもまた、自分は決して独りではないとしみじみ感じていくことになるかもしれません。
自己一致しやすい状態に身を置くこと
たとえば、海に向いたテラス席のロッキングチェアに揺られ、居眠りをする午後。独りではないとしみじみ感じることができる時というのは、案外そんな時なのではないでしょうか。
海に向け、暗い口をぽっかりとあけて、自らの存在を示すどんな信号も発することなく、沈黙したまま時の経過に身を委ねていると、なんだか自分が大地の裂け目や、海水が出入りするだけの洞窟になったような気さえしてきますが、内なる声というのはそういう“感じ”になった際に、いちばんよく聞こえてくる。
よく見られたいとか、義理を欠かさないとか、そういうことを一所懸命やっていると、人生つまんなくなってしまうよ、といった内なる声が聞こえてきそうな、いかにもな状況へと身を引いていくこと。
今週のうお座はそうして、誰かに言われたことや他人の考えに振り回されるのではなく、自分の心をリラックスさせつつ、あくまで心の奥にある真実の波長に自らを一致させていくことができるかどうかが問われていくのではないでしょうか。
今週のキーワード
仰ぐべき天と内なる声