うお座
脱力感のあとの回復
こちらは4月12日週の占いです。4月19日週の占いは諸事情により公開を遅らせていただきます。申し訳ございません。
産みの苦しみ
今週のうお座は、「死ぬものは死に行く躑躅燃えてをり」(臼田亜浪)という句のごとし。あるいは、勇み足をするくらいでちょうどいいような星回り。
生まれたものは必ず死ななければならず、それは悲しいことではありますが、仕方のないことであり、誰にもそれをとどめることはできません。
しかし、あえて言えば、それを素直に受け入れられないのが人情というものでしょう。掲句の場合も「死ぬものは死に行く」と言い切るところから、「躑躅(つつじ)燃えてをり」と一気呵成に繋げていくことで鮮烈な印象を与えてはしますが、同時にそこにはどこかで諦観に徹することのできない命あるものの抵抗という余韻が残ります。
というより、調子を高く出し過ぎたがために、主観過剰でかえって破綻をきたしていると言った方が近いように思います。ある種の逆説的効果がきいている訳ですが、これは掲句を詠んだ終戦当時に妻を亡くしているということも大いに関係しているのでしょう。
つまり、あえて過剰な言葉で心情を吐き出し切ってみることで、おのれの身を浮かばせたのかも知れません。
12日にうお座から数えて「実感と実質」を意味する2番目のおひつじ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、最後の一滴まで絞り出すかのようにおのれの生きる気力を燃え上がらせていくべし。
サティの徒歩癖
19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの作曲家で、しばしば「音楽界の異端児」と呼ばれるエリック・サティは、32歳の時にパリの中心部から郊外の町に引っ越してからというもの、死ぬまでの約30年間ほとんど毎朝、元の家までの10キロ近い道のりを徒歩で歩くことを日課とし、途中ひいきのカフェに立ち寄って、友人と会って酒を飲んだり、作曲の仕事をしたりしながら、午前1時発の最終列車までの時間を過ごしたのだと言います。
時おり、というかしばしば彼はその最終列車さえも逃して、そのときは家までの道のりをやはり徒歩で歩き通し、帰りつくのが夜明け近くなることも少なくなかったのだとか。
こうした彼の徒歩癖は、その創作活動とどんな関係にあったのか。あるいはなかったのか。ある研究者は、サティの音楽の独特のリズム感や「反復の中の変化の可能性」を大切にするところについて、「毎日同じ景色のなかを延々と歩いて往復したこと」に由来するのではないかと考えているそうですが、直感的に述べれば、特に最終列車を逃した後の帰路が鍵を握っていたのではないかと思います。つまり、それがサティにとっての勇み足だったのではないでしょうか。
今週のうお座もまた、そんなサティよろしく、人から見えないところで命懸けになっていくいくことになりそうです。
今週のキーワード
夜明け前の帰り道