うお座
花に触れる
やわらかな情緒
今週のうお座は、「ふれてみしあざみの花のやさしさよ」(星野立子)という句のごとし。あるいは、おのれを失いそうなほどのやさしさに打たれていくような星回り。
恐ろしげな棘(とげ)をつけた薊(あざみ)の葉を見ると、その紫色の花までウニの針かなにかのように見えますが、しかしよく見れば針ではなさそうで、そっと触れてみたら案外やわらかだった。
句の大意としてはそんなところでしょうか。ただし、そのやわらかだったというところを、「やさしさよ」と表現してみせたところに作者の独創があります。
言われてみれば、やわらかというのとはずっと違った、もっと触れた瞬間の複雑な感じの出ている言葉で、作者の鋭敏な感覚とやわらかな情緒をもって初めて発見し得たのでしょう。
その意味で、情感を歌いあげることに傾きがちな女流俳人にあって、写生を押し通し、結果的に並みいる男性俳人のなかでも自由にその翼を拡げていった作者の真骨頂がここによく現れているように思います。
29日にうお座から数えて「小さな死」を意味する8番目のてんびん座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、モノであれ人間であれこれまで生きてきた中でいちばん繊細に触れてみることで何かが開けていくのを実感できるはず。
言葉を待つこと
「いちばん繊細に」というのは言うは易しですが、例えばそれは「話しあい」の代わりに「黙りあい」を試みていくということでもあるかも知れません。
少なくとも、現代人の生活に何が失われてしまったのかと問うならば、その答えは間違いなく「話しあう」時間ではなく「黙りあう」時間の方でしょう。
それができたとき、私たちは当事者意識のない詭弁からも、余計な空気の読みあいや、過剰な自己主張からも解放されて、その数倍の‟ことば”を聞き分ける機会を持つことが出来るように思います。
逆に、普段から‟ことば”を聞き分けることもせず、そのまま頭の中に張り付けてしまっている人というのは、いつしか自然に生気にみちたエロティックな生に入っていくこともできなくなっていくはず。つまり、そうしてみずからの人生を語る言葉を喪失していく訳です。
その意味で、今週のうお座はいつも以上に自分の内側を空にしてそこに生まれた沈黙に耳を澄ませていくことがテーマとなっていくのだと言えます。
今週のキーワード
澄ます前には耳掃除