うお座
あるがままからの出直し
森田療法の根幹にあるもの
今週のうお座は、「心は万境に随って転ず、転ずる処実に能く幽なり」という禅語録の一節のごとし。あるいは、森田的努力に取り組んでいくような星回り。
対人恐怖や広場恐怖などの恐怖症、強迫神経症、不安神経症、心気症などの神経症に対する精神療法である森田療法を1919年に創始した森田正馬(まさたけ)は、さまざまな患者を観察した結果、何らかの「執着」や「とらわれ」に陥っていることから解放されることが最も重要だと考えていました。
つまり、上記のような症状の持ち主は自分の理想と現実のギャップに気をとられ、大抵が他人に対する同情や共感の気持ちを失っており、頭痛や不眠、強迫観念に苦しんでいる訳ですが、これは患者自身の「自己判断の誤り」から生じているのだと、喝破したのです。
彼はこのことを「思想の矛盾」と言い表しましたが、患者の多くは自分で勝手につくりあげた妄想にも近い葛藤に悩んでそこから脱け出さなくなっており、その規制を介助するには、たとえ現実の自分に不満があっても、その「あるがまま」の自分から出直していく気持ちになることが大切だと結論付けました。
冒頭の一文は、そんな森田の思想を如実に表わしたものですが、この「幽」とは「言葉では言い表せないほど見事なこと」の意で、森田療法の根幹を凝縮した一字と言えます。
13日にうお座から数えて「もののはずみ」を意味する11番目のやぎ座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、現実の自分をあるがままにして目前の目的の完遂に向かっていくといいでしょう。
平凡さに立ち戻れる場所
なんとなく気に入っている寺社仏閣であれ、近所の飲み屋であれ、昔よく訪れた思い出の地であれ、ふとした時に立ち返ることのできる場所が現実世界のなかに失われずにあるということは、ずいぶん幸せなことだと思うことがあります。
もちろん時の経過とともに様変わりする箇所もあるでしょうけれど、ひとりでは抱えきれないさびしさや不安を口にだしたとき、そうだね、さびしいね、と明確な言葉ではない形で返してくれる何かがあるだけで救われる。それが人間というものではないでしょうか。
いまのあなたは、そんな人間らしさをここでもう一度取り戻しておこうという地点にあるのかも知れません。
歩んできた道というものが人によって必ず異なるように、なんだか理由なくやりきれない時は、おおいに右往左往すればいい。 そんな風に思えてきたとき、人はいい意味での平凡さ、すなわち「あるがまま」から出直していけるのだと思います。
今週のキーワード
幽