うお座
老いては洞を見つけること
脱・若さ信仰
今週のうお座は、「秋燕や高齢にして見ゆるもの」(宇佐美魚目)という句のごとし。あるいは、歳を取っていくことを肯定的に捉えなおしていくような星回り。
この世には特に女性への若さ信仰が深く広くはびこっていますが、いつまでも若くありたいという一見当たり前の願いも、実は近代以降に生まれていったものです。
それ以前の世界では、老人は老人らしくあることの方がよほど大切にされていたのであり、そこで若い人には見えないものを見ようとしていったのです。
「秋燕(しゅうえん)」は秋に南の国へ旅立っていくツバメのことですが、掲句は旅の空に見たものではなく、日常生活における秋燕でしょう。
旅立ちを見送る立場というのは、いつだってどこか淋しいものですが、家族であれ友人であれ記憶や若さそのものであれ、何かが自分から失われていくということは喪失であると同時に解放であり、そこにある豊かさというものは「高齢にして」初めて味わえるものなのかもしれません。
17日にうお座から数えて「深い因縁」を意味する8番目のてんびん座で新月を迎えていく今週のあなたもまた、また一つしがらみから自由になっていくべく時間の流れを先に進めていくことがテーマとなっていくはずです。
憧れを秘める
7世紀の役小角(えんのおづぬ)を開祖とし山岳信仰に基づいて仏教をとりいれた修験道には、深山の奥深く、霊気の集まる洞(ほら)へと入って修行をし、呪力を身につけることで苦しみから救済され、また自分だけでなく民衆をも救済していくことができるという考え方があります。
もちろん、山には魑魅魍魎も棲んでいますから、それらを退けつつ同時にみずからの煩悩を払い、清らかな心を取り戻していくことで因縁からの解放(救済)が可能になるとされた訳です。
今週のうお座はいわば、ごく普通の日常にとどまりながらも、心だけはその中へと入れることのできる山中の「洞」を見出していくことができるかどうかが問われているとも言えるでしょう。
そうして、心中の「洞」に留まりながら、さりげなく日々を過ごしていくような、そんな胸のうちに憧れ(宗教心)を秘めることで、それを深めていく感覚をつかんでいきたいところです。
今週のキーワード
在家信者