うお座
えたいがしれない
原始時代のダメ人間
今週のうお座は、辻征夫の「春の問題」という詩のごとし。すなわち、超ド級のおおらかさで以って自己をすっかり開いていくような星回り。
「また春になってしまった/これが何回めの春であるのか/ぼくにはわからない
人類出現前の春もまた/春だったのだろうか 原始時代には ひとは/これが春だなんて知らずに
(ただ要するにいまなのだと思って)
そこらにやたらに咲く春の花を/ぼんやり 原始的な眼つきで
眺めていたりしたのだろうか」
これは先に挙げた詩の冒頭部分ですが、ここでは命というものを自分ひとりの個と捉えず、わが身に人類の歴史や過去がすべて流入してしまっているかのような息遣いがあります。
「ああこの花々が主食だったらくらしはどんなにらくだろう
どだいおれに恐竜なんかが/殺せるわけがないじゃないか ちきしょう
などと原始語でつぶやき/石斧や 棍棒などにちらと眼をやり
膝をかかえてかんがえこむ/そんな男もいただろうか」
ええ、いたでしょうとも。けれど、そういううお座だからこそ、なんとも言えない上等のおかしみをもって、殺伐とした人類の営みを眺めていられるのかも知れません。
3月22日に試練と課題の星である土星が、うお座から数えて「自己放下」を意味する12番目のみずがめ座に入っていくあなたもまた、新たな活動への準備として、色々なことを「手放し」ていくことがテーマとなっていきそうです。
父母未生以前の自分と共に
「原始時代の/原始人よ/不安や/いろんな種類の/おっかなさに
よくぞ耐えてこんにちまで/生きてきたなと誉めてやりたいが
きみは/すなわちぼくで/ぼくはきみなので 自画自賛はつつしみたい」
よくよく考えてみると、自分のからだ一つとっても、どこまでが純粋に自分のもので、どこからが父母や先祖からもらい受けたものなのか、その境界線をはっきり定めることはできません。
その意味で、過去はすっかり消え去ったのではなく、脈打つ心臓の鼓動とともに常にいまと共にあるのだと言えます。今週はそんな自分を誉めてあげたり、自画自賛はつつしむ代わりに、あるいは「これが春の問題か」と酒を飲んだりすればいいでしょう。
今週のキーワード
はじめ人間ギャートルズ