うお座
水面の上をはねる魚
努力か、はたまたジャンプか
今週のうお座は、「生産性」という概念に対するラディカルな抵抗。あるいは、その萌芽を自身の何気ない振る舞いの中に見出していくような星回り。
「生まれてきた以上は世の中に必要とされている人間だ」
「今、いのちがある限り、君には必ず使命がある」
「使命を見出すためにも、自分の人生を力強く歩んでいかないといけない」
これは現代社会では見慣れ切ったメッセージであり、「使命」などと大仰な言葉が使われているのも、要は「責務」という言葉の言い換えでしょう。
すなわち「生産性のない人間には生きる価値はない」というどこかの誰かの発言の裏返しでもあり、なんだかんだと言えど、今日の日本社会で広く受け入れられている生産性信仰に基づく実にありふれた思想の表明と言えます。
ああ、素晴らしきかな“不断の努力”と、それを疑うことなく価値づける労働倫理!
しかし本来、生はどこまでも無根拠であり、無底。つまり、あらゆる意味付けや解釈を無効化し、どんな負債からも自由な“語りえない”何かであるはず。
2月2日(日)にうお座から数えて「生命力の顕現」を意味する3番目のおうし座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、自分が投げ込まれ硬直しつつある既存の文脈に抵抗し、そこから飛び出していくためのきっかけをつかんでいくことがテーマとなっていくでしょう。
シオランのエピソード
作家であるとか思想家であるといったカテゴリー以前に、一個の巨大な反抗者であったエミール・シオランは、ある著書の中で次のようなエピソードについて語っていました。
それは彼が20歳のときに、働きもせず明け方に街を彷徨していた息子に対して母親が、「わかっていれば、中絶しておくんだった!」と言い放ったというのです。
「この言葉は、私を打ちのめすどころか、私にとって解放であったと言わなければなりません。この言葉で、私は気力を取り戻した……と言いますのも、自分がまぎれもないひとるの偶発事にすぎず、自分の生を真面目に考える必要のないことがわかったからです。それは解放の言葉でした」
彼の中には、いかなる負債も罪悪感も存在しませんでした。彼の中にあったのは、ただ生に対する飽くなき好奇心であり、その際の尋常ではない躊躇のなさだったのです。今週のあなたもまた、ただただ思いのままに在るべし。
今週のキーワード
生誕の災厄を生き抜くこと