うお座
清水の舞台に立つ際は
まぼろしに酔う
今週のうお座は、「補陀落といふまぼろしに酔芙蓉」(角川春樹)という句という句のごとし。あるいは、狭く険しい道を進んでいくだけのきっかけをつかんでいくような星回り。
「補陀落(ふだらく)」とは、観音菩薩の降り立つとされる伝説上の霊場のことで、補陀落浄土とも呼ばれるもの。
日本の中世においては、「補陀落渡海」といって、南方に臨む海岸から行者が渡海船に乗り込み、そのまま沖に出る自発的な捨身を行って民衆を先導する捨身行もおこなわれていました。
まさに浄土の「まぼろし」に見せられた宗教的伝統のうちの一つであった訳ですが、掲句ではそれが「酔芙蓉」に重ねられている訳です。酔芙蓉は、8月から10月にかけて、薄紅色の美しい五弁の花を咲かせるのですが、朝に花が開くと翌朝にはしぼんでしまうんですね。
さながら、清水の舞台からポーンと飛び降りるみたいに咲いては、「まぼろし」のなかに消えていく。
それはまぼろしに「酔う」ということでもあって、そのなかに何かまったく新しい自分のあり方やそれを可能にするような道というのを見つけていく。17日にやぎ座で満月を迎えていく今週のあなたにも、どこかそんな「酔芙蓉」がきっと咲いていくことでしょう。
「機・度・間」の法則
野口整体の創始者・野口晴哉は、ある時の機関紙に次のような言葉を載せました。
「機とは喝せる人に水を与えること也
パンを出すことに非ざる也度は相手にある也 指にあるに非ず
度の適を得ざれば 技なし間をきめるは息也 自分の息に非ず
相手の息に間を観る者のみ 之を活かすを得る也」
自分がどんな状態にあれ、もし転機に向かう流れを感じた際は、そこに自分を合わせて、ちょっとだけ何か動きを加えていくことが、そうした転機を乗りこなすコツなのです。
逆に、時機を告げる風や流れを何も感じない時は、まずじっくりと転機を待つことも大切です。立秋に秋風が吹いたら咲き始める酔芙蓉のように。今週はそんなタイミングの妙ということに意識を置いていくといいでしょう。
今週のキーワード
間を観る