うお座
断片のかける魔法
中途半端の効用
今週のうお座は、愛すべき猫のしっぽのごとし。あるいは、みずからの不完全さからこそ最大の魔法が発動していくのだと改めて知っていくような星回り。
「中途」はものごとが途上にあること、「半端」は全部がそろってないことを意味し、どちらも何かにつけて下に見られ、そうでなくても社会の中央に近づくほどに異例や例外としてつまはじきの対象とされる傾向にあります。
ただ、そういう不完全で、些細で、不足で不具な断片的なもの―例えば猫のしっぽや書き込みの入った古本、ボタンがいくつか欠けた舞台衣装など―は、しばしばその鋭い断片性(訳の分からなさ)においてデキがよいけれどどこか退屈な全体を凌駕してしまいます。
端的に言えば、人間精神というものは、今にも何かが起こりそうな気配や揺らぎ、崩れというものにたまらない魅力を感じるものなのであり、それは美術やファッション、音楽や詩などにおいても通底している本質なのではないでしょうか。
その意味で、19日(日)にうお座から数えて「気付き」や「覚醒」を意味する9番目のさそり座で満月が起きていく今週は、自らに備わった断片性に改めて気付かされていくことになりそうです。
雑然たる実験室
世界で初となる人工雪の製作に成功した物理学者の中谷宇吉郎は、多くの随筆を残したことでも知られていますが、その中で次のようなことも書いています。
「実験台の上には色々な小道具大道具が雑然と積み重なり、戸棚の中は勿論その上までわけの分かぬ手製の器械で一杯になっている。その中をかき分けるようにして、皆が実験しているのである。雪のような綺麗なものが、こういう所が好きだというのは、ずいぶん不思議である。」(『実験室の記憶』)
中谷が言うように、ほんのかすかな設えの妙や、おどろくべきほどの気まぐれさといった部分こそが、全体のパフォーマンスを左右してしまうことは珍しくないように思いますが、それはなぜかと改めて考えてみると、おそらくはそうしたものこそが時に人の想像力を刺激するからなのでしょう。
今週のあなたもまた、どうしても片付かない断片を見出し、そうした半端や中途にこそ奇蹟を起こすだけの可能性を感じていくことができるはずです。
今週のキーワード
断片こそ全体を凌駕する