うお座
かなしいけれど愛おしい
波打つ生の根本情調
今週のうお座は、「風冴えて魚の腹さく女の子」(石橋秀野)という句のごとし。あるいは、頭の中が「透明なかなしみ」に充たされていくような星回り。
今年は1月20日(日)に「大寒」に入ります。言葉そのままに、最も寒さが厳しい頃合いを指しますが、寒さは極まると透き通ったような感じになっていき、昔の日本人はそれを「冴ゆる」という季語として表してきました。
掲句は、そんな研ぎ澄まされた冬の空気の中、現実への純真な洞察と、そこにわずかに漂う見えすぎてしまうことへの戸惑いとを表現しているのでしょうか。
しかし、いずれにせよ「女の子」は自ら腹をさいた魚を食べるのです。これまでもそうしてきたし、大人になって老いて死ぬまで同じようにしていくでしょう。
それは他の生物を殺して食べ、日々の糧にしていくのでなければ生きていくことができないかなしき人間の性であり、掲句はそんな「透明なかなしみ」の萌芽が、少女の中に今まさに芽生えていく瞬間を詠んでいるのかもしれません。
しし座で月蝕の起きる今週のあなたもまた、社会的現実における幸不幸とは関係なしに、そうした生の根源にある根本情調が波打つように全身を覆っていくことでしょう。
夕日のように溶け合おう
人は大人となっていく過程で、誰しも「女の子」のようなイノセントさを失っていく代わりに、「かなしさ」を鈍磨させ、自分を価値あるものとして光らせていこうとします。
ですが、今週は、特別強い光を伴って輝かなくても人は魅力的でいられるし、そうした魅力は他ならぬ「透明なかなしみ」への感受性によっても培われていくのだということを、頭の隅にそっと忍ばせてみてください。
たとえば地平線に沈んでゆく「夕日」は、朝日よりずっとさびしそうで、なんだか溶け合えそうで、たまらなく魅力的な存在です。
2つの光が混ざってひとつになってゆくトワイライト=たそがれ=「誰そ彼」どきに、人は誰でもないようで、誰でもありえ、nobodyではないが、anyoneであるような、不思議なおぼつかなさを感じていくことができます。
かなしいけれど愛おしいという感情は、そんなおぼつかなさが限界を突破した際に、どこからかふっと湧いてくるものではないでしょうか。
今週のキーワード
トワイライトゾーン