うお座
美しい戦いを
格闘と芸術の融合
今週のうお座は、いいカポエラ使いのごとし。あるいは、みずからの身をもって天地を逆さまにし、そこから見えてくる景色を楽しんでいくような星回り。
世界で唯一、音楽にのせて戦うブラジル生まれの格闘技カポエラは、もともと植民地時代に奴隷たちが手かせをつけられたまま戦えるよう技術を発展させて出来上がったもの。
審判はおらず、人の輪のなかで戦うものの、その本質は戦いというより身体を通じたコミュニケーションにあり、いいカポリストほど、またあの人と組みたいと思われるのだそうです。
身体の自由が著しく制限されていただけでなく、精神までも監視され支配されていた奴隷たちが自分たちの戦い方として選択し、確立していった格闘技が他のどの格闘技よりも平和的であり、勝ち負けを超えたところを目指すものであるという事実は、何とも皮肉な現実であると同時に、それ自体が驚くべき教えと言えるのではないでしょうか。
少なくとも、今週のうお座のあなたにとって、そうしたカポエラ使いたちの優雅な戦いぶりはよき指針となっていくはず。
「蟷螂の尋常に死ぬ枯野かな」(宝井其角)
占星術というのは、その時々の宇宙の配置が生み出していく「時の波動」を読み取るための術ですが、それにはそれぞれが「生の波動」をもってその波にみずから参加していくことが必要不可欠でもあります。
見出しの一句は、冬枯れの原っぱで、交尾を終えたオスの蟷螂(カマキリ)が死んでゆく光景を詠んだものでしょうか。
いつか必ずやってくる自らの死も、草木が枯れていくのと同じように、天然自然の摂理に従ったものとして尋常に受け入れていきたいもの。
ですがこの場合、植物が種子を残して枯れるように、次世代への引き継ぎを完了した後の死ですから、それは単なるあきらめだとか、破れかぶれとは一線を画したものと言えるでしょう。
そして、その姿にはやはり奴隷を超えた者としてのよきカポエラ使いとどこかで重なっていくものがあります。
社会の偏見や制約と戦っていくにせよ、誰かと真剣に向き合っていくにせよ、満月を迎える今週はみずからの「生の波動」に従いつつも、それを美しく昇華していく仕方をどこかで取り入れていきたいものです。
今週のキーワード
制限を超えていく時に美は宿る