てんびん座
自分という星座を見出す
出会いを通じて見えてくるもの
今週のてんびん座は、「月やあらぬ我身ひとつの影法師」(貞徳)という句のごとし。あるいは、誰か何か他者を通して、ただひとりの、ほかならぬ自分へとたどり着いていくような星回り。
この歌は平安初期の歌人・在原業平(ありわらのなりひら)の「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」をもとにしたもの。
「月は昔のままの月ではないのか、春は昔のままの春ではないのか。月も春もすべてが違ってしまったように感じられるが、わが身だけは昔どおりのわが身であって」と、去年の春の夜に逢い、もう終わってしまった恋人を思う歌だ。
作者はこの歌の言葉をそっくり拝借して、秋の月明かりの景色へと換骨奪胎している。しかし春から秋へと移り変わっても、やはり他者から自分自身へと眼差しを転じている点は変わらない。
どんなに時が流れても、あなたはあなたであり、そこにはただひとつの「影法師」があるだけ。
在原業平はたいへんなプレイボーイでありましたが、結局それはさまざまな角度から光を通して、自分というただひとつの不可解な現象を理解していくための布石となっていきました。
今週のあなたもまた、他者を経由して自分へと帰ってきたような実感を得ていくことができるかもしれません。
同じひとつの実体の異なる側面
どこかで誰かが、1本の草の根を引き抜いただけで宇宙は軋むことがあると言っていた。けれど人間の認識能力のキャパを越えた、見えないネットワークの中には意外な結びつきがゴロゴロしているものです。
例えば、宇宙を運行する火星と、豚の生姜焼きに入っているショウガは、占星術において同じネットワークで結びついた仲間であり、目に見えないネットワークは、存在のレベルやスケールを飛び越え自在な結びつきを保っているのです。
何が言いたいのかというと、あなたにもそんな見えない絆で結びついた(一見そうは見えない)同質同類が必ずいるのであって、意味のある偶然とは、そうした仲間の一本釣りに他ならないということ。
これは! と思った相手には、体ごとぶつかっていきましょう。そうして、新たな星座をつくり出すように、離れた点と点を結んでいってください。
それこそが誰かとの出会いを通じてたどりついていく、他ならぬ自分自身の像なのです。
今週のキーワード
目に見えないネットワークで繋がっている