てんびん座
個と集団のはざまで
利己主義と利他主義
今週のてんびん座は、「金魚売買へずに囲む子に優し」(吉屋信子)という句のごとし。あるいは、おのれを生かしていかねばらならぬのは承知の上で、人情の機微を転がしていくような星回り。
金魚を買えない貧しい子供たちが、金魚売りの周りを囲んで時おり声をあげつつ、金魚を熱心に目で追っている。金魚売りの方だって、決して裕福ではないはずだ。でもだからこそ、貧しい子供たちの気持ちが痛いほどよく分かり、どこか他人とは思えないのだ。
作者はそんな人情の機微をすかさず読み取り、言葉にしている。これぞまさに人間観察のプロの業と言ったところでしょう。
今週のあなたもまた、少なからず言葉を使って誰かに何かを伝えていく存在であるからには、見極めなければなりません。
自分の経験と観察とで、ギリギリのところで無理にならない落としどころを見極めていくこと。それこそが、今後あなたが大いに直面していくであろう課題となっていくはず。
個人本位と遺伝子本位
一時期、生物学者リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」という考え方が多くの人に影響を与えた時期がありました。
これは生物や人間が、個体の意志も欲望もすべて遺伝子が生き永らえるために利用され、個体こそ遺伝子に奉仕しているのだという遺伝子本位の見方。
この考えが多くの人を惹きつけたのは、おそらく生命体として永遠に生き続けたいという人々の無意識的な願望と結びついたからでしょう。
個体本位の考え方や見方というのは、人類の歴史的には非常に浅く特殊な発想に過ぎないのです。だとすれば、個体としての自分のメリットだけを見すえた利己主義など、遺伝子の願望と相容れないことの方が多くて当たり前でしょう。
今週のあなたは、そんな個人としての輪郭を超えて溶け合っていくべき大きなまとまりや、同胞意識をリアルに感じていけるかもしれません。
今週のてんびん座へのキーワード
輪郭が溶ける