てんびん座
風天と不調和
渥美清の踏み込み
今週のてんびん座は、「赤とんぼじっとしたまま明日どうする」という渥美清の句のごとし。あるいは、自然に物事が進むままにするか、それとも自分の欲求に合うよう物事を変えていこうとするか、分かれていくような星回り。
作者はあの寅さんシリーズの寅さん演じる渥美清。俳号は「フーテンの寅」から「風天」と称していたそうですから、どこかで映画の役柄に自分を重ねているところがあったのでしょう。
掲句では、そんな作者が目の前に止まっている赤とんぼに、お前、明日はどうするんだい、どこかアテでもあるのかい、と優しく呼びかけています。
むろん、それは自身への呼びかけにほかならず、お互いに風に吹かれるままに流れていく身として、赤とんぼを自分の相棒と見立てている訳です。
人によっては、たまたまやってきた赤とんぼをあくまで客観的に、自分と切り離して観察するだけで終わってしまうところですが、そこはやはり作者本人の持ちあわせていた人情味なのでしょう、一歩踏み込んで受け取っていった。
ここのところなどは、今週のてんびん座にとって大いに指針になるのではないでしょうか。
「聖戦(ジハード)」
「誰と対せど、何に向えど、
その一切は自己との戦い。
償いの果て巣立ちを目指す、
心の悪(不調和)との戦い。」
“赤とんぼ”はいわば、自分を鏡映しにしてくる他者のメタファーでもあります。そうであればこそ、こちらの思う通りには決して動かないでしょうし、それでいいのです。
逆に、ああしろ、こうしろ、なぜこう動かぬと無意識の内に思っているうちは、「心の悪(不調和)との戦い」はいつまでも続くでしょう。
今週のキーワード
この世は不調和に満ちている