てんびん座
弱くても、愚かでもいいじゃん
時代が激変する時は
今週のてんびん座は、ラスキンとモリスの批評と実践のごとし。あるいは、時代の痛みや軋みにグッとまなざしを傾けていこうとするような星回り。
今さまざまな業界でChatGPTが仕事シーンを書き換えていますが、こうしたテクノロジーが経済と結びつきによって社会構造の組み換えようとする流れは今後ますます速く、強くなっていくでしょう。
ただ、こうした状況において、“社会は真っ先に生活の中の美的な価値を犠牲にしてしまう”のだと指摘したのがデザイナーの原研哉です。『デザインのデザイン』(2003)という本の冒頭で、彼は「時代が進もうとするその先へまなざしを向けるのではなく、むしろその悲鳴に耳を澄ますことや、その変化の中でかき消されそうになる繊細な価値に目を向けることの方が重要なのではないか」と1つの指針を打ち出しています。
そして注目すべき歴史の一つとして、150年前のイギリスが近代化の過程で機械生産で活気づいた一方で、粗雑な日用品の発生という状況に直面したことを例に挙げています。
いわく、「デザイン」という思想の源流となったジョン・ラスキンとウィリアム・モリスは、それぞれ講演と著作、芸術・デザイン運動という形で、「生活環境を激変させる産業メカニズムの中に潜む鈍感さや不成熟に対する美的な感受性の反発」を展開したのであり、その“痛みの深さ”が引き金となって、デザインという考え方・感じ方、すなわち「最適なものや環境を生み出す喜びやそれを生活の中に用いる喜び」に基づく既存の芸術とは異なるムーブメントが世に現われてきたのだ、と。
翻って、昨今の世の流れになんとか適応する中で、いまあなたの生活では何が犠牲になっていて、どれほどの悲鳴をあげているのでしょうか?というのも、新たな時代の到来には、必ず相応の痛みの発生が伴うものだからです。
10月29日にてんびん座から数えて「受苦」を意味する8番目のおうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、それがどんな引き金をひいていくことになるのかを確かめる意味でも、まずは現在の生活に潜む「鈍感さや不成熟」にしかと目を止めていくべし。
身から出たフツー
人を蹴落とせば孤独になる。そんな簡単なことも、実際に経験してみないとなかなか分からないものです。特に若いころは、とっとと何か目立った業績をあげたり、いつも何かに怒ってみせることで、自分の価値があがったような気になるものだし、それで中途半端に成功してしまったりすると、かえって後に引けなくなって、あっという間に中年になっていたりする。
でも思うように成功が続かず、活躍する場がなくなったり、仕事そのものが来なくなったりして、狼狽したり絶望したりしていると、ある日ふいに強くて成功している必要も、どこにもない個性を光らせている必要も本当はないんだ、と気付くわけです。
弱い自分というのもいいのではないかと。国でも人でも、強い者というのは結局まわりに迷惑をかけますから。競争社会では、みな他人のことなど構わなくなり、弱い者から切り捨てられがちですが、弱いからこそ、誰かのことを真剣に思うことができるし、孤独から逃れられ、気持ちも豊かになるのかも知れません。その意味で、今週のてんびん座もまた、強さの呪縛から自分を改めて解き放ってみるといいでしょう。
てんびん座の今週のキーワード
自分をやさしく諭していく