てんびん座
共にイキイキするために
コミュニケーションをケアで塗り固めない
今週のてんびん座は、イリイチの「I don't care」という答えのごとし。あるいは、ケア的な関わりをできるだけ放棄していこうとするような星回り。
オーストリアの批評家イヴァン・イリイチは、ある人から「エチオピアの貧困問題をどうすべきだと思うか」と問われ、「I don't care」と答えたのだそうです。普通に訳せば「どうでもいいさ」「関係ないよ」といったニュアンスになりますから、一見するとギョッとするような言葉です。
イリイチの真意はどこにあったのか。「ケア」という動詞は「世話をする」とか「面倒をみる」という意味ですから、イリイチは問題への関わり方として「ケア」という方法論を根本から批判しようとしていたのだと言えます。
ケアとは、人間の存在を「ニーズ(基本的な欲求)の固まり」として捉える人間観に基づいており、そうしたニーズを引き出し、満たしてやることが幸福の実現であるということになっています(占星術ではこうした「ニーズ」は月が司る)。ところが、産業社会の構造を分析していくなかでイリイチは、そうしたケア的な関わりこそが、ありもしなかった人びとのニーズをつくり、助長して、依存的にさせてしまっているのではないか、と看破したのです。
人間は本来、自らの生活空間を創り出す上で、モノを消費するのではなく、自力で自然と交渉することを大切にしてきましたが、ケア的な関わりはそうした人間の基本的なサバイバル能力を奪ってしまうのだと。
10月3日にてんびん座から数えて「生活の基盤」を意味する4番目のやぎ座で上弦の月を迎えていく今週のあなたもまた、心からの“安心”を作りだすために、自分がどんな原理を選択していくべきかという点に自覚的になっていくことがテーマとなっていくでしょう。
生きた自然として在る
「整体」という言葉が普及するきっかけをつくった野口晴哉は、自然に生きるとは何も獣のように山野を駆け回ることにあるのではなく、「白い飯を赤き血にして、黄色き糞にしていく」そのはたらきにこそあると述べました。
生の食べ物を食べても、生水を飲んでも、海で泳いでも、森の中に入ってもそれが自然なのではない。人間という集合動物が街をつくり、その中に住んでいたって決して不自然ではないのだ。ただその生活のうちに生の要求をハッキリ活かすよう生くることが、生くる自然であることだけはハッキリしておかなければならない(『月刊全生』)
野口に言わせれば、一見「何の不自由もない」ように見えたとしても、外部に自分を満たしてくれる材料を探している状態に過ぎないうちは、「自然に生きる」ことにはならないのでしょう。
その意味で、今週のてんびん座もまた、まずはみずからの“よりよく生きる要求”に改めて耳をそばだて、そこに外なる自然としての他者を重ねていくべし。
てんびん座の今週のキーワード
おのずからに任せる