てんびん座
気遣いからの回復
「おのれ漂う」体験
今週のてんびん座は、『目つむるとおのれ漂ふ花疲』(森川喜美子)という句のごとし。あるいは、個人の魂を明確に際立たせていくための儀式に臨んでいくような星回り。
「花疲(はなづかれ)」とは、花見を終えて家路についたときや、帰宅後に感じる物憂く気だるい疲れのことで、ある種の放心状態のようなものとも言えるかもしれません。
そうした眩暈にも似た疲れというのは、周囲に張り巡らしている気遣いの反動でもあり、私たちはつね日ごろから役者さながらに周囲世界に気を配り、共演者と息をあわせ、観客に目配せしながら、ものごととの交渉に明け暮れるようにして生きている訳ですが、てんびん座の人たちというのは、そうした気遣いの均等な配分に特に神経をつかう傾向が強く、ついつい自分が置いてけぼりになってしまうのです。
その意味で、掲句に詠まれたような「おのれ漂う」体験とは、起き上がりこぼしのようにゆっくりと再び自分を立ち上げていくための動作であり、過剰になってしまった気遣いを丁寧に解除していく回復プロセスなのだとも言えます。
同様に、4月13日にてんびん座から「務めと業(わざ)」を意味する6番目のうお座で木星と海王星が重なっていく今週のあなたもまた、自分のなかの無意識的な不快感や無力感を取り去っていく時間を確保していきたいところです。
ギーガーの場合
例えば『エイリアン』の造形をデザインしたH・R・ギーガーは、独特の世界観をもつカルトスターとなりましたが、その創作の秘密について、ドキュメンタリー映像のなかで「自分の夢に出てきたものを描いている」と述べていました。それがプロモーション用の設定であれ真実であれ、いずれにせよ彼が隠遁生活の中で次々と作品を生み出していったことは確かであり、ギーガーにとって夢を思い出す時間こそ魂の儀式だったのかも知れません。
また実際にギーガーの絵を見た人の多くは、おそらくそこに強い性衝動の抑圧を感じる事と思いますが、彼は実際10代の頃に初めてキスをしたことで、しばらくの間絶え間ない性的興奮に襲われ、起きている間中頭の中をエロティシズムが占めていた時期があったと語っており、その体験が創作に与えた影響も大きかったようです。
今週のてんびん座もまた、そんなギーガーのように、じっくり自分へ寄り添い向き合っていく時間の中で、研ぎ澄まされ、育まれるものの力を再認識していくことでしょう。
てんびん座の今週のキーワード
夜見る夢は意識の自己中心化を夢見る